恋してくれますか-6
先生の顔を見ると、先程と同じようにただ私を見ている。
無表情だけれど、その顔はどこか面白そうに私を観察している。
私はついムキになり、半ば飛び上がるように教科書に向かっていった。
あ、と思ったときには身体がふわりと浮かんでいて、私は椅子ごと盛大にコケてしまった。
いたい。
は、恥ずかしい…。
「悪い、からかい過ぎたな。」
先生に謝られたことが尚更羞恥を掻き立てて、私はその場で突っ伏した。
「何してんだ。」
「私、とんでもなく恥ずかしいです。」
「そんなこと、今に始まったことじゃないだろ。」
「ひ、ひどい。」
私が文句を言おうと顔を上げると、先生が私に目線を合わせるようにしゃがみ込んで、教科書を差し出していた。
「あ…はい。」
私は間抜けな返事をして、教科書を受け取る。
スカートに少し付いた埃を払い、先生とほぼ同時に立ち上がった。
私に教科書を渡して用のなくなった手を、先生が軽く握った。
つい、目線が引き寄せられる。
「先生、指綺麗ですよね。」
「指?」
先生が不思議そうに、自分の左手を見る。
それが、なんだかおかしかった。
私は少し開いた先生の手を、両手で包んだ。
「触っていいですか。」
「…もう、触ってるじゃないか。」
先生はただ、冷静に指摘する。
「先生、なんで…?」
私は最後まで言わずに、先生の手で自分の頬を包んだ。
なんで…
なんで、私はこうしたくなってしまうんだろう。
なんで、先生は何も言わないの?
「畑本…?」
「先生、私……」
先生、体温低そうだけど、やっぱり手はあったかいなぁ。
「………おい、お前顔熱くないか?」
「…はぁ…?」
いつもぼんやりしている私の意識が、更にぼんやりしてくる。
先生のはっとした顔を見て、私は目を閉じた。