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鳴神家物語(秋の場合)〜異説勇者物語!〜
【ファンタジー その他小説】

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鳴神家物語(秋の場合)〜異説勇者物語!〜-2

シュッ!
目の前を泡の付いた包丁が飛んでいた。
「うわわわっ!危ないだろ母さん!」
「あらあら、ごめんね。洗い物がたまっててつい『力』使っちゃったわ。」
「はぁ・・・まったく気をつけてくれよなぁ。」

家の両親は大変な変わり者だ。それはネーミングセンスだけではない。
世間一般では超能力っていうんだろうか、それが使えるのだ。
家ではそれを『力』なんて呼んでいる。
母さんの『力』は物を動かすことのできるいわゆる念動力(テレキネシス)ってやつだ。



今はそれを利用して洗い物をしていたらしい。

「まったく、俺だからよかったけど他の人に見られてたら大変じゃないか!」
「も〜、そんなに怒んないでよ!いいじゃない秋だったんだし。」
「まったく・・・そんなんじゃ父さんにも怒られるぜ?」
「え〜、そんなことないわよ。ね、あなた?」
えっ?
「うんうん、その通りだ!」
思わず声のする方向を見やるが食器棚があるだけだ。
まさか・・・。
「父さん!出てこいよ!」
ビュッ!
音と同時に食器棚の前に父さんが現れる。
そう、父さんの『力』は自分と自分が触れたものを透明にするというものなのだ。
「ママ!ママのせいで秋に気付かれちゃったじゃないかぁ〜。」
「うふふ。でも、あのままじゃ秋ったらいつまでもあなたに気付きませんでしたよ?」

「うぅ・・・それも悲しいけど・・・。」
勝手にやりとりを進める2人。
「ちょっと、一体なんだってんだよ?!」
わけがわからず思わず尋ねると。
「そうそう、実はパパが透明なままでも秋は自分に気付いてくれるのか?なんて言いだしてね。私はそれは無理なんじゃないって言ったんだけど、パパが秋は気付いてくれる!なんて言うもんだから。」
「そしたら秋は気付いてくれないんだもんなぁ〜。父さんは悲しいよ。まったく。」
この2人は・・・。
2人は自分が特別だってことをまったく自覚してないんだよなぁ。
「はやく帰ってきたかと思えばこんなことして、ほんとしょーもないんだから。」
「ほーら、やっぱり。言ったでしょうパパ。」
「おおおぉ〜・・・・。何てことだ秋!」
???
「な、何だよ2人とも?」
「秋、パパは朝から透明なままであなたと一緒に学校にまで行ったのよ?」
ガタガタガタ!!
両親のあまりのお茶目さに思わず食器棚に頭をぶつける。
も、もういいや・・・・。
「と、とにかく気をつけてくれよな!俺は部屋に行くから。」
「秋、ちょっと待ちなさい。お前にも『力』があるかもしれないんだから気をつけるよーに!父さんたちもお前くらいの頃に『力』が出てきたんだからな。」
「その話は何度も聞いたよ。何の変化もないし俺には『力』は遺伝しなかったのさ。」

「それならいいが・・・『力』の発現と能力はそのときの精神状態に大きく左右されるから、とにかく気をつけておけよ。」
「は〜い。」

しかし、発現・能力が精神状態に左右されるなら父さんは一体何を考えてるときに透明になる能力を手に入れたんだろうか?思春期真っ只中の俺には分かる気がする。ムフフ。


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