いけないあそび-10
五、遊び相手
制服の前を開け広げ、襟を掴んで荒々しく口付ける。
負けじと志久野の襟を掴む灰田に、彼は笑って再び唇に吸い付いた。
口内を蹂躙するような舌の動きに灰田は戸惑うが、何とかその舌に応える。
「ふっ……ん、は……」
以前の自分ならば、友人に――男に口付けるなど考えられもしなかった。
今はどうだろう? 友人に、男に自ら舌を求めている。
おそらくこの今までに感じたことのない快感は、いけないことをしている、そんな背徳感から来るものだ。
志久野の手が背中に回される。シャツと上着を捲り上げられ、直に肌を撫でられるとぞくりと身体が震えた。
「感じてる」
耳元で囁かれる声にも感じた。
股間は熱くて、苦しくて、それでも志久野の前で自らズボンを下ろすことなどできず、灰田は強く志久野の襟を掴んでいた。
その肩がびくりと震えたのは、志久野が灰田の股間に手を伸ばしたからだった。
馴れた手付きでベルトを外し、下着の上から揉むようにそれを弄る。
「……っ、う……!」
気付けば濡れていた下着は膝辺りまで下ろされていて。志久野が既に硬くなっているそれを握り、ゆっくりと上下に扱き出すと、灰田の喉が仰け反った。
更に志久野の中指が裏筋をなぞる。先走りで濡れた音が響く。
「うあっ……あっ、お、い……!」
「何だよ、もうイキそうなわけ?」
呆れたような言葉だが、声は笑っている。
灰田には言えなかった。まさか、再びあの上級生と志久野の絡みを見て勃起してしまったなど。
「仕方ないか。時間もそうないし、次行こ」
志久野は笑って、例の透明なボトルを取り出した。
そしてボトルの中身――ローションを手に絡ませる。
「ば、っかやろ……! 無理、無理だって……あっ!」
もがく灰田を押え付け、ぬるついた指を彼のそこに沈めようとする。
腰が跳ね、灰田の目が見開かれた。
「力抜かないと、辛いぜ」
志久野は灰田の首筋に口付けを落としながら、空いた手で灰田のものを握り締める。
「嘘……だろっ、んなっ……あっ!」
体内に指が入り込む、妙な感覚。粘着音が灰田の羞恥心を煽る。
くちゃくちゃと粘ついた水音。
熱を帯びた声。
書庫の中に、それらが響く。
――書庫へ来た時には橙色だった空が、今ではもう藍色に染まっていた。
二十時には帰らないと、旧校舎の鍵が閉まってしまう。
それでも二人は時計などには目もくれずに情事に耽っていた。
「……もう、いいかな」
ぐったりとした灰田を見下ろして、志久野は舌舐めずりをした。
犯された痕のように身体を投げ出し、涙目で息を荒げる灰田の姿は、彼にとって扇情的だった。
灰田は視線だけを志久野に寄越し、睨み付けた。
「意地が、悪い……っ!」
息も絶え絶えに言う。
ずっと穴の中を指で弄られ、おまけに一物も扱かれて。それでも志久野はイカせてはくれない。
気も狂いそうになる。灰田は己のものを張り詰めさせたまま舌打ちをした。
「言ったじゃん、俺は鬼だって」
「鬼って、そういうことじゃねーだろ!」
圧し掛かってくる志久野に、灰田は声を張り上げた。
「さあね」
楽しげに言い、再び穴に指を挿し込む。
「んっ……あぅ……っ」
「いい感じだよな? さっきすっごい良く鳴いてくれたのは、此処だっけ?」
「ああっ! やっ……そ……こっ!」
甲高い声が出る。
志久野の二本の指がそこを掠めると、出したくもないのに嬌声が出てしまい、早く楽になってしまいたいと、自分でものを扱きたくなる。