卒業-2
中学校は制服。
『あの服どこにしまった?』
『服なんか何でもいいから早く着替えなさい!』
毎朝のあの掛け合いもなくなる。
胸にぽっかり穴が開くとはこーゆう事を言うのか。
私がいなければ何もできない子だと思ってた。
この子には私が必要なんだと…
とんでもない思い上がりだ。
私にこの子が必要なんだ。
この子が私の背骨で原動力で、この子がいなければ何もできない。
入園入学と全く同じ心配をして、それをバカらしいと思いつつ、それでもこの先この子が高校生になっても大学生になっても社会人になっても、親元を離れて遠くで暮らし始めても、私は間違なく同じ事を思うだろう。
良い友達ができますように
良い出会いがありますように
「よし、終わった!」
ピカピカとは言えないけど、少しくすんだ色をした洗いたてのシューズを軒下にぶら下げた。
卒業式が終われば、このシューズの出番はなくなる。
毎週末洗い続けた母の気持ちなど、我が子には一生かけても微塵も伝わらないだろう。
でもそれでいいんだ。
陽の光を受けてキラキラ輝くシューズを誇らしげに眺めた。
あんなにめんどくさかったシューズ洗いからの卒業は、清々してるのに意外に切ない。
こうやって、私は一つずつ子供としてのこの子から卒業していくのか。
でもこの先もずっと私は心配し続ける。
この子が大人になって、いつか親になってもずっと、私が母親である限り――…
「お母さん!この前買ったTシャツ知らん!?」
階段の上から翔太の声が響いた。
…そっか。
土日はずっと私服でした。
それに気付いた途端、思わず顔がほころんだ。
これは一緒に暮らしてる限り叫び続ける事になりそう。
卒業するのはまだまだ先の話だ。
いつもよりワクワクした気持ちですぅっと大きく息を吸い込んだ。
「服なんて何でもいいから早く着替えなさい!」
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