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おに。
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バレンタインデー-4

「まぁな、生まれた時から知ってるし。小さい頃は一緒に風呂入ったりして」
「まさに親戚のおじさんっすね」
「大きくなったらトモ君のお嫁さんになるんだー、なんて言ってて。可愛かったなぁ、つむぎ」
「…それはそれは」
「この前も寝込んでる俺の為にわざわざお粥作りに来てくれて」
「ほー…」
「優しいよな、つむぎって」

つむぎつむぎ、うるせぇな。

「トモ君は一人寂しいバレンタインですか」
「そう、慎吾君と一緒」
「俺にはつむぎがいますから」
「部屋から追い出されたくせに」
「準備ができるのを待ってるんです」

一刻も早くこいつから離れたくていつもより大きめにハンバーガーにかじりついた。
そんな俺を見てトモ君はふっと笑う。

「チョコ」
「は?」
「もらってないだろ」
「もらってないっすよ」
「俺さっき、つむぎにもらった」
「…は?」

…さっき?
なわけないだろ。あいつは今俺ん家な筈。
こいつのとかなんか行くわけないじゃん。
はったり?
いや、惑わされるな。

「義理チョコ獲得ですか」

動揺を悟られないように平静を装ったけど、トモ君は余裕の表情。

「それはどうかな」
「…?」
「つむぎ、チョコレート一つしか買わなかったんだってさ」
「一つ?」
「俺にくれた分だけ。つまり、お前の分はなし!」
「………」

ケタケタと楽しそうな笑いを浮かべるトモ君が憎たらしくて仕方ない。
ていうか、俺ってチョコレート無しなの?
朝から家追い出されて必死に時間潰してんのは何の為?
いやいや、あの記念日女がバレンタインにチョコレート無しとかありえんだろ。

「嘘だと思うならつむぎに聞いてみたら?」
「…いや、そこまでしなくても――」
「ふぅん?」

そこまでしなくても?
よく言うよ。
こいつの前で確認するのが怖いだけ。
こいつを信じたわけじゃない。
つむぎを信じてないわけじゃない。
でも…

「なんだよ?」
「別に」

チラッとトモ君に目をやって、すぐに戻した。

つむぎのいとこ。
俺と同じくらい、いや、もしかしたら俺以上につむぎを知ってるかもしれない。

俺、つむぎの事で誰かに嫉妬するなんて思わなかった。
つむぎを制御できるのは世界中探しても俺くらいだという自信があった。
でもこいつは俺の知らないつむぎを知ってる。
つむぎのアルバムに俺はいないのにこいつはいる。俺の見た事ないつむぎの隣に当たり前のようにいるのは俺じゃなくてこいつ。

もちろんその事でつむぎには何の罪もない。

ただ、俺が妬んでるだけ。


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