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おに。
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バレンタインデー-3

「…はぁ、えっと、誰――」
「やっぱり!お前電話の声丸聞こえ!!」

そう言って俺に何の了解も取らずにわざわざ同じテーブルの向かいに腰掛けた。

なんだ、こいつ?
妙に馴々しいし、初対面でお前呼ばわりだし。
嫌だな、関わりたくないタイプだ。
ここでしばらく時間潰すつもりだったのに…

「つむぎは?」
「あ?」
「つむぎ。一緒じゃねえの?」

何こいつ人の彼女呼び捨ててんの?

「あんた、誰」

イライラしてつい口調を強めてしまった。

「俺、つむぎのいとこ」
「いとこ?」
「そう」

いとこ。
いとこ…

「って、トモ君?」

以前つむぎからいとこが近所に住んでるって聞いた事がある。

「初対面でトモ君とかキモいし!」

お前も俺を慎吾君呼ばわりしただろうが!
正直キモかったわ!!

なんだろう、なんかいちいちイラッとする。
そういえば、つむぎからこいつの話を初めて聞かされた時から何となく存在そのものが気に入らなかった。
年が近くて仲の良いいとこ。
互いのアパートに出入りする仲。

「バレンタインなのに彼女にほったらかされてるんだー。可哀相に」

この口調。

他人の色恋沙汰なんかに興味のない俺でも分かる。
こいつ、つむぎの事が好きだな。


「…バレンタインの準備してるらしいですよ」
「へー、何してんだろうな」
「さぁ」
「全身にチョコレート塗りたくってたりして」
「…」

考える事はみんな同じか。

「節分はどうだった?」
「は?」
「ラムちゃんのコスプレしたんじゃねぇの?」
「するわけないでしょうが」
「あ、そうなの?」
「提案されたけど却下したんで、す…よー―」

俺の言葉にトモ君はニヤニヤしながらジュースを飲んだ。
妙に楽しそうな顔。
いや、それよりこいつがそれを知ってるって事はー

「あんたがあいつに余計な入れ知恵してんのか!」
「入れ知恵ってなんだよ。俺はつむぎに相談されてんの。俺の方が付き合い長いし、頼られてるから!」

勝ち誇った顔。
あーーー、ムカつく!

「付き合い長いって、ただの親戚付き合いじゃん」

俺の反撃にトモ君の口角がピクンと引きつった。


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