青山恵理・修学旅行の夜-9
『――ス・キ――』
………えっ………?
嘘――――?
今……「スキ」って言った?
櫻木くんが?
私のことを?
思わず目を見開いた私に、櫻木くんは優しく頷き返した。
嘘みたい―――。
でも夢じゃないんだ……。
私も……
私も好きだったの。
ずっと櫻木くんのことが――。
その思いをなんとか伝えたくて繋いだ手を強く握り返すと、櫻木くんの顔がゆっくりと音もなく近づいてきた。
これって……まさか―――。
そう思った時には、もう唇が重なっていた。
微かなミントの香り。
震えるような息使いから、櫻木くんの真っ直ぐな想いと緊張が伝わってきて、胸がきゅうんと締め付けられる。
……櫻木くんと
…キス…しちゃった……。
軽く触れあったあと、遠慮するように一旦離れたその唇が、またすぐに私を求めるように近づいてきた。
二度目のキスはさっきより少し長く………そして三度目はもっと……。
ちゅっ……ちゅっ……と唇がくっついては離れる度に、甘く切ない感覚が込み上げてくる。
――キスの正しいやり方なんてわかんない……。
ドラマや映画の主人公は、どんなふうにしてたっけ……何も思い出せないよ。
……身体が熱い……。
生まれて初めてのキスで、気持ちはいっぱいいっぱいのはずなのに―――まるで魔法のスイッチが入ってしまったみたいに身体の奥底がじくじくと疼いている。
満たされていく心と反比例して、肉体はもっともっと深い刺激を求めて次第に渇いていっているような気がした。