青山恵理・修学旅行の夜-19
「もういいよ渋川くん……服の上からちょっと触られただけだし……それより恵理は?大丈夫だった?」
「……えっ?……あ……う…うん……大丈夫……」
ミカに心配そうに聞かれ、私はドキマギとうなずいた。
私のされたことは、ミカのされたこととは内容が違いすぎて、とてもじゃないけど公表出来ない。
「ホント?……ホントに何もされなかった?」
みんなの間にお互いを探り合うような気まずい空気が漂っている。
「ね、ミカ……また先生来る前に……部屋戻ろ……」
息苦しくなった私は、ミカの袖を引っぱって立ち上がった。
とにかく一秒でも早くこの場を立ち去りたい。
逃げるように襖を開けようとした時、櫻木くんが不意に私を呼び止めた。
「あ、青山―――。あのさ、修学旅行終わったら、一緒に……どっか遊びに行かない?」
全員が「おや?」という表情で櫻木くんを見る。
それって……
それってつまり……
デートの誘い……だよね。
あんなはしたない姿を曝した私を……気にいってくれたってこと?
それとも……目的は―――。
少し前の私なら手放しで喜んだだろうけど……今は少し櫻木くんが怖い……。
突然人が変わったように私を攻め立てた、強引で冷ややかな態度が脳裏に焼き付いている。
男の子って、みんなあんなにエッチでいじわるなの……?
この部屋に来て以来、あまりに急激な展開に頭がついていかない。
どう答えていいかわからずにモゴモゴしていると、ミカがすかさず口を挟んできた。
「あー!ゴメンね櫻木くーん!恵理ってすごくウブなのよ。だからまずは私たちとダブルデートしない?――ね!渋川くん!」
さっきは全然アテにならなかったのに、こういう時だけ先輩面してしゃしゃり出てくるミカがホントにうざい。