鬼-1
差し出された拳程の石を言われた通りに握った。
「…っ!?」
掌が突っ張るような熱く焼けるような感覚がした。
取れない。
無理矢理に剥がそうとしたら、皮が剥けるんじゃないかと思った。
「タイガくん、なんで…?」
「ウッハハハ!だいせいこぉ!よくやったケンシ」
その様子を見てタイガ君が笑う。
タイガ君の陰でケンシ君もくすくす笑っていた。
「ぜんぜんとれねーじゃん」
「オレがうちからもってきたせっちゃくざい、すごいだろっ」
二人はケタケタ腹を抱えて笑いながら皆の元へ駆けていく。
「オニはトモキがするってよ!」
タイガ君が大きな声で叫ぶ。
もちろん、意義を唱える者などいない。
タイガ君が接着剤の付いた石を握らせたこと、全員知っているのだから。
「…かぞえるよ」
その場で目を瞑りゆっくり三十数えた。
みんなに聞こえるように大きな声でゆっくり、ゆっくり。
「さーんじゅ」
目を開けて辺りを見渡す。廃れた境内が静かに広がっていた。
ここは大人たちは知らない秘密の隠れ家。
煩い街や狭い学校とは違う自由の場所だ。
そこで遊ぶのは仲良しの証拠。
石を持ったままみんなを探し回る。
割れた灯篭の陰に動く人影を見つけ一目散に走った。
「モエちゃんみっけ。つぎ、モエちゃんがオニね」
しゃがみ込んでいたモエちゃんが立ち上がる。その目の前にスッと石を差し出した。
「えーちがうよ。モエはオニじゃないよ。トモキくんがオニだよ」
「どうして?さいしょにみつかったのに…」
モエちゃんはプッと吹き出して、小さな両手で口元を押さえた。
「それ、とれるの?イシオニは、いしをもってるコがオニなんだよ」
差し出された石を指差してまたくすりと笑う。
三日月のように歪んだ瞳が随分と楽しそうだった。
「でも…これは…」
「トモキくんがもっかいオニー!」
そのままモエちゃんはどこか別の場所へ隠れてしまった。
仕方なく、また三十数える。今度は声を出さず、心の中で。
頭の中では黒い物が渦巻いていた。たぶん、これは抱いてはいけない感情なのだ。
ここは秘密の隠れ家。仲良しの証拠。
こんなこと考えちゃダメだ。
そう言い聞かせると、その混沌とした思いが少し晴れた。
目を覆っていた手を外して改めて探しに行く。
寂れた神社の床下で二人見つけた。