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帰らぬ夏
【フェチ/マニア 官能小説】

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帰らぬ夏-1

 私は中高一貫、強豪といわれる中学のソフトボール部員だ。今日も炎天下で白いボールをひたすらに追った。秋の全国大会に向けて、夏の強化練習は始まったばかり。もしエラーをすれば、ケツバットという強烈に痛い体罰が待っている。ボールを捕ってから5秒以内にホームに返せないときも、コーチに呼びつけられる。呼びつけられれば必ずケツバットされる。中学に入ってからソフトを始めた私はよくエラーもしたし、肩も弱かった。私は早速コーチに目をつけられ、チームの叱られ役になってしまった。
 コーチは母校の元四番打者。高校を主に見ているが中学も指導する。体格もよく、女性とは思えない力強いスイングで狙ったところを正確にひっぱたく。だからちょっと痛くても安全だとコーチは言う。中学部の監督は年配の男性で、その様子を黙って見ている。でもその監督、コーチの元で私たちは強くなった。3年生になった今年は全国大会でも活躍できるレベル、指導にもさらに熱がこもった。

 私が初めてコーチにお仕置きされたのは、中学に入ったばかりの頃だ。エラーをしたとき、あっ、やっちゃったと思った。コーチに呼びつけられて、フェンスのところに両手をつきなさいと言われた。私はフェンスに軽く両手をついて、普通に後ろ向きに立っていた。先輩たちの体験談によると、コーチの方に前屈みになってお尻を突き出して、踏ん張ってフェンスをしっかり握っていないと危ないらしい。でも恥ずかしかった。胸がドキドキしていた。
 私たちの練習スタジアムは2階が観覧席になっている。そこからいつでも父兄や一貫校の高校生部員も練習を見学できることになっている。チームメートはしかたないとしても、2階からも誰かが見てるかもしれない。
 1年生の間は一人前扱いされず、ユニホームではなく、普通の体操着にブルマーしか着せてもらえない。その薄いブルマーの、お尻の肉がいちばん厚いところをコーチの木製バットが強打した。バシーンと音がした瞬間、体がフェンスにぶつかってバウンドした。しっかり踏ん張っていなかったからだ。
「N子、愛の鞭!」
 練習に戻るときに上級生が言った。

 

 強豪中学ともなると、少年少女ソフトチームの経験者がほとんどだ。男の子に交じって練習し、ケツバットされてきた子も多い。チームに入れば男子も女子もなかったし、その年の1年生は私以外みなそうだった。
「N子、どうだった? 初めてのケツバット体験、感想は?」
 練習が終わると早速、興味津々という感じで聞いてくる子がいた。
「もう、眼から火が出そうだったよ」
 私が口を尖らせてそう言うと、笑いの渦が起こった。
「ユニホームだとお尻のポケットにハンカチくらい入れておけるけど、ブルマーは薄いし絶対痛いよ」
「そうなの?」
「うん。それよりN子、コーチに狙われてるぞ。お仕置きの格好のターゲットにされちゃうぞ」
「もうされてるよ。あたしはみんなみたいにうまくないもん」
「そうじゃなくて。叱られながら照れてちゃダメだよ。練習中は女の子捨てなきゃ」

 練習を見学に来た母は、いきなり私がコーチにケツバットされている光景を目撃してショックを受けた。
「N子ちゃん、痛かったでしょ。お尻、大丈夫?」
「うん、昔のお母さんにされてたお仕置きよりはちょっと痛いかな」
 じつは、私の母は後妻だった。死別した生みの母は厳しくて、物心ついたときにはよくお尻を平手打ちされていた。その頃のお仕置きの理由はよく思い出せない。小学校時代には木の物差しや、しゃもじのようなものでもお仕置きされた。


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