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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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独占欲=醜いもの?-1

1 ……白雪だ。
柄にもなく、緊張してる。
何でかって?……これから、憲とデートだからだ………。


『独占欲=醜いもの?』


先日の打ち上げで、見事に恥をさらしたアタシは、正直…肩身の狭い思いをした。アタシの知らないうちに、高坂のバカタレが例の……キ、キスシーン…の写真をばらまきやがったからだ。
憲は別に気にする様子もなく、普通に過ごしていた。アタシは不思議に思って聞いてみたんだ。
そしたら……『恥ずかしがるから恥ずかしいんだ。堂々としてろよ』だってさ。
自分から憲にキスしたのなら堂々としてられるのだが……。酔っていたとはいえ、自分から憲に抱きついてキスをねだったとなると恥ずかしい。記憶にないから尚更だ。
…え?それとデートで緊張してる事と何の関係があるのかって?
まぁ、待ってくれ。話はこれからだ。
事の発端は中間テストが終わった日だった。
その日、アタシはいつもの喫茶店で、キスの写真について麻衣と愛里にグチっていた。ちなみに中間テストはかなりのできだったが、そんな事を話したってつまらないだろうからパス。
「いつまで怒ってるのよ。二週間も前の事じゃない」
「そうそう」
「知らないところであんな事になったら、お前らだって絶対グチる!」
麻衣の言葉に愛里が頷くが、アタシは納得できない。
「知らないって、白雪がやらかしたんじゃない」
「酔ってたから記憶にない!!」
「確かに、かなり酔ってたよねぇ。こう、太田くんにすりよってさぁ」
愛里が麻衣にすりよりながらアタシの真似(?)をやりだした。
「へぇ、それでそれで!」
「あ、愛里!!」
「いいじゃない。…で、一言…「キスしてぇ」だもん」
「うわぁ、マジで?」
「マジマジ」
「聞いてたのよりも甘えてるわね」
……ん?『聞いてたのよりも』?
「……麻衣、誰に聞いた?」
アタシが出せる最低音で麻衣に聞く。今まで笑っていた麻衣と愛里がビクッとなって、油の切れたからくり人形の様になった。
アタシのこの声色は災いの前兆だ。
「え………っと、その…高坂くんがね」
「フッ…フフフフ、そうか、高坂がな。言いたい事があったら、明日の放課後までに言っておけ。言えなくなるから」
明日がヤツの命日だ。
震える二人を視界の端で捕えながら、アタシは邪悪な笑みを浮かべた。
「で、でもさぁ。キスぐらいで、ちょっと騒ぎすぎじゃないの。あんたら付き合い出してもうすぐ半年よ?その間にキスだって何度もしただろうし、体のお付き合いだってしてるんだろうしさぁ」
か、体って。麻衣の言葉に、思わず飲んでいたブラックコーヒーを吹きそうになった。
「デートだって、数えきれないくらいしてるんでしょ?」
で、デート……?
「行くでしょ?ショッピングとかぁ、映画とかぁ、遊園地とかぁ」
ちょっと顔を困惑させたアタシに、親切丁寧に定番とも言えるデートする目的と場所を指折り出してくれる愛里。
が。がっ!がっっ!!
「で、デート……まだ、したことない……」
「「……………………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」
アタシの発言に、二人は文字通り絶句してから絶叫した。世界滅亡の予言でもしたのか、アタシは?
周りの視線おかまいなしに、二人はアタシに詰め寄ってくる。
「うそでしょ!?」
「ありえない!!!!」
「いや…ホントで、ありえるから」
事実だ。少なくとも、今さっき愛里が言った様なデートはしてない。
「ありえない!!ありえないから!!!」
「あんたら、ホントに付き合ってんの?」
「し、失礼なっ!!アタシと憲はちゃんとした恋人同士、甘い関係だぞ!!」
「半年付き合ってるのに、デートした事ないカップルが甘い関係なわけあるか!!」
麻衣に断言されて、アタシは言葉に詰まった。た、確かに…普通ならデートぐらい行くよなぁ。
「普段、どんな事してるの?」
呆れた顔しながら、ケーキを食べる愛里が聞いてきた。うーん………。
「憲の家かアタシの家で料理教えてもらったり……、ビデオ(ほとんど時代劇)みたり……、散歩したり……かなぁ」
あ、あと食材の買い出しとか。
それを告げると、妙に納得したような顔をしていた。
「なるほどね。あんたらしいわ」
「でもさぁ。白雪はともかく、太田くんは言わないの?『どこか行こうか?』とか」
「……言わない」
そういや、アタシはともかく、普通な男の憲が恋人のアタシをデートに誘わないってのは……おかしくないか。も、もしかして、アタシの事……。


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