投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『It's A Wonderful World』
【コメディ 恋愛小説】

『It's A Wonderful World』の最初へ 『It's A Wonderful World』 22 『It's A Wonderful World』 24 『It's A Wonderful World』の最後へ

『It's A Wonderful World 4 』 -5

「おまえら、何さわいでるんだよー」

マサキの背後に立っていたのはアキヒロだった。
アホ面でアイスを食べている。
僕とマサキは数秒の間、アキヒロを凝視した。

「いいのか。アホってのはこいつと同じレベルってことだぞ」

「ひとんちのアイス勝手に食うようなアホと一緒にするな!」

つうか、お前ら勝手にひとんち上がるなよ。
しかし、そんなセリフは、幼馴染には通じない。

「お前らなんだよー。ちゃんとおばさんに許可もらったぜ」

「いいや、シュンの母ちゃんに限ってそれはない」

ヒトの母親をなんだと思っているのか。

「いくらウチの母親だって、アイスくらいやってもおかしくないだろう」

その時、階段の下から足音が聞こえた。
ドスドスと。

「くぉらっ! アキヒロくん! まーた、ひとんちのアイス勝手に食べて! 金払いなっ!」

「ひいっ! すんません!」

筋骨隆々のアキヒロが怯える。
僕は、そんな実母を見て。

「江美子……」

思わず実名をつぶやいてしまった。
親父の稼ぎが悪いから……。

「とにかくだ!」

マサキが話を戻す。
気づけばいつのまにかアホに話をかき回されていた。

「シュン! このまま、仁美さんにアホだと思われていいのか!」

声を張り上げるマサキ。

「……ヒトミさんって誰だい?」

その声に反応する母。

「マサキ、母ちゃんいるんだから、黙れよ」

ぼそぼそと小声でマサキを注意した。
なんとなく母親に仁美さんのことがばれるのは嫌だ。

「いいのかって言ってんだよ! お前の愛する仁美さんにアホだと思われたままで! お前が毎晩マスかいて――」

「かいてねえよ! つうかマジ黙れ! もうお金払ってもいいから! お願いだから黙ってください」

気づけば、僕は土下座していた。
そうだった、こいつはこういう奴だった。
もう10年くらいの付き合いなのに。

「ふっ」

そんな僕を見て、マサキは大人びた笑みを浮かべる。
ひどく芝居がかっていた。


『It's A Wonderful World』の最初へ 『It's A Wonderful World』 22 『It's A Wonderful World』 24 『It's A Wonderful World』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前