『It's A Wonderful World 4 』 -13
「だから、お前の勉強を見てもらおうとしたんだよ」
「老師と呼べだす」
「誰が呼ぶかっ!」
アホだった。
やっぱりアキヒロなんかに頼むんじゃなかった。
そもそもアキヒロの知り合いに頼りになる人がいるわけがないんだ。
「シュン君。わたすをなめてもらっちゃ困るだす」
メガネをかけなおして、ベンゾウは僕に鋭い視線を送る。
その横で、アキヒロが息を呑んでいた。
ああ。
どうしてもコントをしているようにしか見えないんだ。
だって、セリフがアレだもん。
「わたすは8年も浪人してるだすよ?」
「だからどうした!」
決定的な一言を言ってるつもりのベンゾウを切り捨てる。
「じゃあ、逆に聞くが8年もダメだった奴がどうして高校生の勉強を教えられるんだ!?」
「……受験勉強のプロだすよ?」
「結果が出てねえじゃねえか!」
「………それでも、今の君よりは上なはずだす」
「何を根拠に言っている?」
急に上から目線になるベンゾウ。
「だって、わたすにはユキさんが……。ぷぷっ」
「そっちかあああああ!」
ベンゾウの首を絞めていた。
全力で。
「なんでお前なんかに! ユキさんにいくら払ったあああああ!?」
「苦しいだす……。し、死ぬだすよ……」
ベンゾウの首を絞めて、ぶんぶん振っていた時。
突然、ドアが開いた。
「よお! 元気に勉強してるか? シュ――」
勢い良く入ってきた、マサキは僕に首を締められているベンゾウを見て静止した。
まあ、いきなり友達の部屋にベンゾウさんがいたら誰だって驚くわな。
信じられないものを見たかのように、マサキが口を開く。
「老師……」
「ええええええええ!」
べ、ベンゾウ!? じゃないんだ。
つうか、老師て。
「シュン! お前、老師になんてことしてるんだ!?」
突然、マサキに手を叩かれる。
「大丈夫ですか、老師?」
ベンゾウの肩を抱きながら、マサキは僕に問い詰めるような目を向けた。
「シュン、お前……」
「大丈夫? レイ兄ちゃん」
駆け寄ってきたアキヒロが、ベンゾウの背中を優しく撫でている。