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『It's A Wonderful World』
【コメディ 恋愛小説】

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『It's A Wonderful World 4 』 -12

「べ、ベンゾウさん!?」

次の日、アキヒロに連れられてやってきた男を見て、僕は叫んでいた。
アキヒロは強力な助っ人を連れてきてやったぜと自慢げな顔をしている。
そんなアキヒロの横に立つ男。
古びたよれよれの学ラン。
伸び放題の無精ひげ。
厚い牛乳瓶の底のようなメガネ。

「べ、ベンゾウさん!?」

僕は、再び同じことを言ってしまった。

「誰がベンゾウだすか!」

男は強い鉛のある言葉で反論する。

「まんまじゃねえか」

どこをどうとっても、あのベンゾウさんだった。
きっとメガネをとれば、3のような目があるに違いない。

「俺の従兄弟の伊集院レイさんだ」

「ウソをつくな!」

今だ自慢げなアキヒロを突っ込みで切り捨てる。
こんな冴えない男がそんな格好いい名前なわけがない。

「名前のことで嘘とか言われても……」

「お前にはベンゾウ以外ありえねえ。改名しろ」

僕の勢いにおされ気味のベンゾウさん。

「ひどいだす……」

「だすってなんだ! だすって!」

ああ。
突っ込みどころがありすぎる。
このままでは、この男の全てに対して突っ込みを入れてしまいそうだ。

「シュン! やめろよ! レイ兄ちゃんは8浪中で、ナイーブなんだぞ!」

8浪て。

「いい加減、自分のダメさに気づいて働け」

「ひ、ひどいだす……」

崩れ落ちるベンゾウさん。

「こんなわたすを応援してくれる彼女のためにも、がんばるべって思ってただすに……」

「彼女!?」

なんでこんな男に彼女がいるんだ。
ニートの分際で……。

「ユキさんにどんな催眠術をかけたーー!」

「さ、催眠術なんてかけてネっす! というか、なんで彼女の名前知ってるんだすか!?」

ベンゾウさんの襟首を締めながら、僕はとりあえず想像通りの名前を口にしていた。

「で、ベンゾウがうちになんのようだ」

僕は根本を揺るがす質問をアキヒロに投げかけた。


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