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ENDS
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ENDS-9

SIDE:Asaki

オバケが成仏したらしい。
1カ月前に姫代が話してくれた。

『有介が天国に行ったんだぁ』

そう言って笑った。

『朝希たちに認めてもらえて嬉しかったんだよ、きっと。未練とか無くなったんだね。良かった良かった!』

とも言った。

『有介、天国で幸せになれるよね』

でもその笑顔は引きつって、今にも泣き出しそうだった。
私は適当に慰めて言葉を掛けた。
オバケと私との話は言わない。姫代は知っちゃいけない。
私はなんてひどい友達なんだろう。
私が二人を引き離したのに友達面して。
おかげで姫代は1カ月経った今も笑わない。
愛想笑いはするけど、その笑顔が悲しく見える。
私が姫代の横顔を見つめているのも気付かない程、ぼうっとくれいむの外の通りを眺めていた。
いつになったら姫代は元気になるんだろう。

「…はぁ」

私は短い溜め息をついた。

「…あ」

とほぼ同時に、ぽつりと姫代が呟いた。
目が大きく見開かれていく。そう思いきや、自動ドアに向かって姫代は走り出した。

「姫代!?」

私もそれを追うようにドアの方を見た。
そこには一人、男性が立っていた。松葉杖をついていて、片側に体重を掛けている。
その人に向かって姫代は走っているようだ。
顔を確認して私は心臓が止まるんじゃないかと思った。

「有介ぇ!」

姫代が大声を出してその人の名前を呼んだ。

「会いに来るの、遅れてごめんな」

罰が悪そうに笑ってオバケは頭を掻いた。
私が今、目の前で見ている光景はなんだろう。
夢なの?現実?まさかこんなこと、本当にあるの?

「バカバカァ!私…嫌われたんだって…何なんですか!もぉ〜っ!今までどこに、いたんですか…!」

走り寄って抱きつくのかと思いきや、姫代はオバケの腕をバシバシ叩き始めた。
でもやっぱり泣いてる。

「いや〜オレ、実は死んでなかったみたいでさ〜。成仏したかと思ったら、意識不明が回復♪記憶も元通り♪みたいな。あ、朝希ちゃんヤッホー!」

オバケのあっけらかんとした態度に困惑して、私は力無く手を振ることしか出来ない。

「ヤッホー、じゃないですよぉっ」

姫代がグスッと鼻をすすった。

「もう幽霊じゃないんですか?有介は生きてるんですか?」

オバケの話だと、オバケはもうオバケじゃない。


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