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『私の咎』
【熟女/人妻 官能小説】

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『私の咎』-8

―*―

「ふぁ〜あ、おはよう……」
「あら、おはよう、あなた。背広出してますから、それとネクタイも……」
「うん、ありがと……」

 朝食を作る間に洗濯機を回す。部屋の掃除はパートの前までに済ませればいい。
 まずは夫と子供を見送る必要がある。
 パートを始めてまもなくは戸惑うことも多かったが、最近はそれなりにこなせるようになってきた。

「秋雄! 学校に遅れるわよ?」
「は〜い」

 眠い目をこすりながらやってくるのは父そっくり。
 秋雄はシリアルとハムエッグ、パンをもさもさ食べ始める。
 そこへ着替えた英明がやってきて新聞片手にご飯を食べ始める。
 なんど言っても止めてくれない習慣なので、先に奈津美のほうが折れた結果だ。

「そうだ、貴方、今週私遅くなるみたいなの。夕飯は作っておくからお願いね?」
「ん? そうなの? どうして?」
「なんだか来月のセールのための品卸をするからって言われて。みんなで残って掃除から値段設定まで作業するんだって」
「ふぅん。ご苦労だね」
「貴方ほどじゃないわよ」
「いやいや、家事の合間にパートと残業をこなしてくれるなんて君は妻の鑑だよ」
「もう、褒めたって晩酌は発泡酒だけだからね……」
「残念……」

 がくりと肩を落とした英明だが、すぐに笑顔を取り戻し、かばんを片手に玄関へ向かう。

「あ、あなた、もう行くの? 忘れ物は?」
「あ、ごめん、ハンカチと……」
「はいはい、ハンカチハンカチと……」

 タンスから紺のハンカチを取り出し玄関へ急ぐ。なぜかにんまりしている夫にそれを手渡すと、ぐいと手を引かれ……、

「ん……ちゅぅ……」
「ちゅ……うぅ……」

 夫の固い唇。

 舌はなく、触れるだけ。

「今日もがんばってね……」
「もう、あなたったら……」

 性的ではないキス。たまに不意をついてされる。
 妻であることを強く意識させられる、彼の酷いイタズラ。

 少し嬉しいけれど……、




 物足りなくもある。


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