『私の咎』-19
そう思い始めていた奈津美だが……、
『お、お願いします……飲ませてください……、店長の精子、飲みたいんです……』
背後から聞こえた機械的な音声は、紛れもなく自分の声。
「奈津美ママ……、綺麗だったなあ……」
しみじみと言う博は笑顔で小型のレコーダーに耳を傾けていた。
「なんですか、それ! ちょっと、どういうことですか……?」
恥ずかしさと不安に困惑する奈津美は博にかけより、その手にあるものを取り上げようとする。
「これは僕のです。あげませんよ」
「僕のって……、どうしてそんなこと……」
「だって、奈津美ママ、素直じゃなさそうだったし……」
「素直じゃないって……?」
背伸びしようにもあと数センチ届かない。それでもぴょんぴょんと飛び跳ねてレコーダーを奪おうとする奈津美。そして、博は……、
「ん? んぅ……むちゅ……」
奈津美の柔らかい唇に、やはり柔らかいものがくっつけられ、それは強引に滑るものをしのばせ始め……。
「くぅ……、ちゅぅ、にゅちゅ……ちゅ……」
気持ちとは裏腹に重くなる瞼。そして身体。背伸びの姿勢も維持できず、彼にもたれかかるようになってしまうのが屈辱だが、唇は……。
「んはぁ……ね? 素直じゃないでしょ?」
「……はぁ……、そんなこと……ないです……」
はたしてどうだろうか?
今の生活に幸せを感じているはずの奈津美だが、それでも足りないものはある。
一番のそれは、昨日博に埋めてもらったもの。
「奈津美ママ、欲求不満でしょ? ほら、僕が解消させてあげるよぉ……」
博は甘える口調になると、エプロンの内側に手を伸ばし、ニットセーターの上から彼女の胸をもみ扱き始める。
「ちょ、っと……あぅん……や、やめてください……、人が、誰か来ちゃいますよ……」
「大丈夫、今の時間帯は誰も来ないから……」
商品の届く時間でもなく、商品チェックは一人で行うべき仕事。そうなれば倉庫など、誰も来る理由がない。
ピンチといえばそうなるが……、
「ね、奈津美ママももう濡れてきてるでしょ? こことかさ……」
抵抗が薄いことに調子に乗った博は右手を彼女の綿パンへと向かわせ、ぐにぐにといじり始める。
「あ、やめ、やめてください……、そんな、酷いです……私には夫も子供も……いて、だから、こんな……あぁん……!」
ラックを掴み、力の入らない身体をなんとか支える。
「……あはは、そうだよね」
「ええ、やっぱりそう思います?」
「!?」
倉庫の扉が開き、女性パートの笑い声が響いてくる。
今の時間帯、彼女たちはレジ、もしくは店内清掃をしているはず。
博と奈津美はいったん意を同じくし、倉庫の奥へと隠れる。
入ってきたのは坂入弘子と木ノ内京子。
二人とも年が近いせいか仕事中もよくおしゃべりをしていて、どちらかというと不真面目な部類にはいる。