海螢(久美子の場合)-3
あれは高校三年生のときだった…。
塾の帰りに夜道で男たちに囲まれるようにして、廃屋となった倉庫に久美子は連れ込まれた。
…ブスじゃねえか…
金色に髪を染めた三人の不良高校生たちだった。彼らはうしろ手に縛った久美子の乱れた制服の
スカートからパンティを毟るように剥ぎ取り、白い太腿の付け根のうっすらとした繊毛に覆われ
た陰部に、ごくりと唾を呑み込んでいた。
…処女とやりたいって言ったのは、おまえだろ…
…でも、この女、ブスだけど、体だけはむらむらするじゃねえか…
すでに股間を膨らみ始めさせた丸顔の肥えた男が、ズボンと縞のトランクスをゆっくり下げる。
粘りのある粘液で包まれた包皮から赤黒い肉棒がひくひくと頭をもたげ始めていた。
男は飢えた獣のように縛った久美子の体に覆い被さり、縄が絡んだ制服の胸元の下着からこぼれ
た乳房をもみしだき、色白の腿を撫であげ、恐怖に震える桜色の乳首を舐め始めた。
…やっ…やめて…
初めて男に裂かれた久美子の性器だった…。
男たちの撥ねるような肉棒から、次々とどろりとした白濁液が迸るように久美子の中に注ぎ込ま
れた。生ぬるい液が久美子の性器の中で、蛇のようにとぐろを巻く。
縛られた蒼い体の上で、波打つ男たちの醜い尻肉。淫唇の中に強く押し込まれるぬめった肉棒…
淡く靡いた繊毛に擦りつけられるぬるぬるとした垂袋…
あのとき、縛られて輪姦される自分の姿態が、昨日の出来事のように久美子の脳裏にあらわれて
くる…。
眼鏡をゆっくり外してみる。自分の顔があの写真の中の女性と重なる。
あの一枚の写真は、ウミホタルの写真の額の中に隠されるように挟み込まれていた。
そして、その写真の裏には「M.シマムラ 愛する妻へ」とボールペンで書かれていた。
だれだろう…この写真を撮った男の名前だろうか…そして、自分とよく似たこの女性はこの男の
妻なのか…
五年前に死んだ母は、死ぬ前に久美子の双子の姉のことを呟いた。姉はその三年前に病気で死ん
だということだった。
今となっては、別にどうでもよかった。姉が生きていようと死んでいようと…。生まれたときか
ら一度も会ったことのない双子の姉…。
もしかしたら…写真の中の縛られた女性は双子の姉かしら…まさか…偶然だわ…別人に決まって
いる…
でも… ずっと気になっている。
縛られて、熱蝋で責められる女…でも、その恍惚とした表情には、どこか淡い恋に充たされたよ
うな甘い香りが漂っている。久美子は、彼女の顔のなかに、自分を重ねようとするもうひとりの
自分がいることをかすかに感じていた。