『Summer Night's Dream』その5-3
「少し気になる話を聞いたんだ。本庄さくらについて」
本庄さくらについて。
気になる話を聞いた……。
「……調べたんですか?」
部長の切り出し方は唐突すぎるというか、妙な言い回しが感じられた。
だから陽介はそう聞いた。
「さくらの何を調べたんですか?」
「気に障ったか?」
口元を吊り上げて、不敵に笑う。
「大いに障りましたね。そんな探偵みたいな真似して、人のこと詮索していいと思ってるんですか?」
「真実の探求の為ならな」
ご立派なことで。
「まあ、俺だって直接嗅ぎ回るほど不躾な調査をした訳じゃない。ちゃんと段階を踏んだ」
と水嶋は言った。
「大和台と聞いてピンときてな、景子に探ってもらうことにしたんだ」
「……ケイコさんに?」
思わぬ人が出てきたな、と陽介は思った。
景子さんとは水嶋がずっと付き合っている彼女のことだ。
中身はともかく顔は申し分ないこの男の周りには、いつも少なからず騒いでる女子共がいるのだが、景子さんはそれらとはレベルが違った。
頭が良いのはもちろんだが、物腰が柔らかいというか、理知的な女性だった。
何回か会ったことがあるけど、正直部長には勿体無いくらいのいい人だった。
どうしてこんな男と付き合っているのか、機会があったら是非とも聞いてみたい。
「だけど、同じ学校だからって、景子さんとさくらじゃ学年が違うでしょう?」
と陽介は言った。
「多少の無茶なら聞いてくれるさ」
水嶋はさらりと言ったが、景子さんが骨を折ってくれたのは間違いなさそうだ。
「俺が景子のヤツに頼んで、本庄さくらの友人に聞いたんだが、彼女、俺達にまだ隠してることがあるな」
「な、何ですか、それ……」
もったい付けるような水嶋の言い方だった。
陽介がとっさに聞き返す。