同窓会-3
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店を出たところで、追ってきた藤木に腕を掴まれた。
『柏木ちょっと待てよ!』
駅に向かって歩き出そうとするあたしの頭に、藤木の大きな手がふわりとかぶさった。
その途端、あたしの視界が涙でぼやける。
潤んだ瞳から溢れ出した涙が、幾筋も頬を伝い流れていく。
無理をしている色々なことを、藤木に見透かされそうで罰が悪かった。
どうにか声は堪えたけど、鼻を啜る音だけはどうしょもない。
『どうした柏木?お前なんかあったのか?』
心配そうに覗き込む藤木を、あたしは手で制した。
藤木に見られたくなかったなぁ…あたしのこんな姿。
あの頃だってずっと強がってたんだから、いまさら涙なんか見られる前に、黙って別れてしまいたかった。
「何でもない…」
あ―あ…
あたしかっこ悪過ぎ。
藤木はこの10年間で、すっかり大人の男になったのに、あたしは未だ大人の女とは程遠い場所にいる。
あの頃とちっとも変わらない不器用なまんまで…