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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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白雪=舞姫?-2

2 『舞姫コンテスト』とは、全校生徒の中で一番可愛い女生徒を決めるイベントだ。もちろん『舞姫』とは前に話した、地元の伝説の主役である絶世の美女に由来する。
「じゃあ、出なきゃいいじゃんか」
「でもなぁ、クラス中から頼まれたら、その…断れなくって。それに、もしアタシが優勝したら最優秀クラスにかなり近付くだろ?」
苦笑いしながら、白雪は言った。
コンテストの優勝者が所属するクラスには文化祭中、最高の得点が与えられる。どうも、我がクラスの連中は揃いも揃って負けず嫌いらしい。困ったもんだ。
ちなみに、去年の『舞姫』は学年のアイドルである鈴沢恵美だ。
聞いた噂によると、去年の結果に満足していないらしい。理由は簡単、白雪が出なかったからだ。
だから、今年は白雪が出ると知って、急遽参加を決意したらしい。
まぁ、見た感じ、自分がNo.1じゃないと気が済まなさそうな、プライドの高そうな女子だからなぁ。
「だから、行ってくるからな。…その、見ててくれよ」
「……あぁ、大丈夫。見てるよ」
そう言って、白雪は会場の方へと駆けて行った。
しかし、あぁは言ったが、正直気が乗らない。でも、見ない訳にもいかない。白雪との約束は絶対破りたくないから。
俺は重い足取りで、会場へと足を進めた。


『皆さん、お待たせしました!各クラスから選ばれた舞姫候補たちの入場です!』
司会がマイクを片手に喋り始めた。
俺は候補たちが上がる舞台の前にいる気にはなれず、少し離れた、桜の木の下にいた。
思えば、四ヶ月前に、ここに呼び出されたんだっけ……。
感慨にふけっていると、コンテストが始まった。
『……より、舞姫コンテストを開催します!!』
壇上の女生徒はみんな、水着姿だ。露出は少ないが、そんな事は知ったこっちゃない。
ただ、白雪の水着姿が衆目に晒されてると言う事実が、俺の心を乱す。黒い…何かが心を支配する。
白雪の横には鈴沢がいた。確かに去年の舞姫なだけの事はある。出来れば、観衆の目は全部そっちに行って欲しいというのが偽らざる俺の気持ちだ。
って、俺、何か醜いな……。
コンテストは、いつの間にか司会が候補たちに質問をする時間帯になっていた。『好きなタイプは?』と言う、定番な質問だ。
1年1組の女子から、順に聞いていくらしい。
「近くにいなくていいの?」
急に後ろからそう聞かれて驚いた。白木さんだった。
「……いいんだ」
「見てる、って約束したんじゃないの?」
「ここでも見えるさ。近くで見てる、とは約束してないからね」
「屁理屈ね」
分かってるよ、そんな事は!
「そんなに嫌なの?白雪がコンテストに出るの」
「別に、嫌じゃないさ」
「嘘が下手って、よく言われたでしょ」
うぐっ。確かに嘘は下手だ。どうも顔に出る。軽い嘘をつくのは得意だけど。
「白雪も、本当は出たくなんてないと思うわ」
「分かってるよ。白雪がこういうイベントが嫌いな事くらい」
男嫌いの白雪が水着姿で男の視線を浴びるのは、辛いことだろう。
「分かってるけど、白雪が自分で決めたんだ。俺は白雪の意思を尊重したい」
「本当に、嘘が下手ね」
「………どういう意味だよ?」
「あなたは白雪の意思を尊重してるんじゃなくて、逃げてるのよ。自分に自信が無いからって、白雪から距離を置こうとしてる……。私ね、白雪にあなたが好きだって聞かされた時、正直嬉しかった」
「……嬉しかった?」
「もちろん、驚いたわよ。でも、それ以上に嬉しかった。私と白雪は小学校の時からの親友だからね、荒れた白雪は見てられなかったから。そんな白雪が惚れたあなたを、私はふさわしいと思った。けど、今は駄目ね。逃げ腰のあなたは白雪にふさわしくないわ」
………言いたい放題、言ってくれるなぁ。流石は白雪の親友……、手厳しい。
まったく、白木さんの言う通りだ。
「元々、ふさわしくないんだよ、俺は。……でもね、どうしても、駄目なんだ。自分でも、ふさわしくないって思ってるのに、白雪の側にいたいんだ」
「なら、いればいいじゃない!」
「そんな資格、俺には無いよ」
「あのねぇ、恋愛に資格なんて必要ないの!!……なんでそんなに自信がないかなぁ」
「白雪を好きでいる自信はあるけどね。今だって、俺の心はどす黒い独占欲でどうにかなりそうだ」
白雪を独占したいと言う欲望が俺を醜くしていく。分かってる、子ども地味てる事ぐらいは。
でも、自信がない。白雪を束縛する自信が。
俺なんかが白雪を束縛していて、白雪は幸せなのだろうか……。その自信がないんだ。


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