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田舎教師
【フェチ/マニア 官能小説】

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田舎教師-3

 先生は夜遅くに帰ってきた。ひどく疲れて見えた。先生は天井の梁とテーブルの脚に繋いでいた2本のロープをほどいた。それから猿轡をはずされ、水を飲んだ。手足のロープはほどいてくれなかった。
「先生」
 私にはいろんな思いが込み上げていたが、言葉にはならなかった。2度の借金を断られ、プライドを傷つけられて修羅と化した先生に、かける言葉がどうしても見つからない。
「おれは悪人だ。手足のロープはほどいてやらないぞ」
 先生はそう言うと板敷きの床に毛布を広げ、私を抱き上げてその上に仰向けにそっと寝かせた。それからもう一枚の半分に折り畳まれた毛布をブルマーからむき出しになった私の両脚に載せ、それを広げて肩までかけてくれた。

 私は心身ともに疲れ切っていた。手足を縛り上げられたまま、浅い夢を見て朝を迎えた。悪夢の続きが待っていた。その日は午前中、塾の授業が組まれていた。
「お前に騒がれると、まずいんでな」
 先生は毛布をはぎ取ると私をまた梁から吊し、両脚をテーブルの脚に繋ぎ、手拭いの猿轡を噛ませた。昨日と同じ格好にさせられたのだ。薄い壁一枚を隔てて、先生は慌ただしく授業の準備をしているようだった。ほどなく生徒達が集まってくる気配がした。
「先生、おはよう」 
 小学生くらいの男の子の声だ。
「よ、おはよう。元気がいいな」
 先生が明るい声で応えている。
「先生、今日もよろしくお願いします」
 男の子の母親だろうか。
「先生、おはようございます」
 野太い男性の声がした。中年くらいかな。私が通っていた頃と変わらない、和やかな授業風景が目に浮かぶ。それに引き比べ、いまの自分の姿が切ない。
「うん、ずいぶんうまくなったぞ」
「先生のおかげですよ」
 先生と男の子の母親の明るい会話がはずんでいる。でもそれは、壁の向こう側の世界。壁のこちら側の私は、体操着ブルマー姿で後ろ手に梁からロープで吊され、猿轡で声さえ発することができない。
 やがて授業を終えた生徒達は、何事もなかったかのように帰っていく。
「先生、ありがとうございました」
「また来週な」
「はい」
 男の子の声がしたあと、急に静かになった。みんな帰ってしまったのだ。私一人を残して。

 人の気配がしなくなってから何時間が過ぎただろう。玄関の戸が開く音がした。また外出していた先生が戻ってきたようだった。先生は大きな足音をたてながら、私の監禁部屋のドアを乱暴に開けた。
「お前の縄をほどいてやることはできなくなった。恨むなら父親を恨め。当分そうしていろ」
 眉間に皺を寄せながら、先生は怒りに震える口調でそう言った。きっと交渉が暗唱に乗り上げたのだ。もう先生の修羅の顔は見たくない。私の子供の頃の優しかった先生に戻ってほしい。私はなんとか自分の気持ちを伝えたかったが、意地悪な猿轡が邪魔をする。先生にはうめいているように見えるだけだった。
 先生は私の目の前でタバコに火をつけると、うつむいてしばし考え事をしていた。それから立ち上がって私の脚を少し見つめ、それから私の眼をじっと見て言った。
「前にも言ったが、お前には何の恨みもない」
 先生はまだ何か言い足りなそうだったが、ドアを閉めて出ていった。また家の中がシーンとなった。今朝からずーっと立ち姿のまま梁から吊されている。せめて横になりたい。午後の日差しに太股の汗が光って見えた。


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