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田舎教師
【フェチ/マニア 官能小説】

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田舎教師-2

 車は塾の方向に向かっていた。昔バスでよく通った見覚えのある道だった。先生はバックミラーに時折目を走らせ、私の様子を確認していた。私は座席の真ん中で、上半身を縛り上げられたまま座っていた。
「先生、なぜ?」
 先生は少し黙っていた。
「一晩だけだ。明日は解放してやる」
 これ以上尋ねてもムダだと思った。車はやがて山道を上り、郊外の先生の一軒家に向かった。そこは先生の塾と住居を兼ねていた。近くをバス通りが走っているものの、市街地からはかなりの距離がある。先生の家の駐車場に着いたとき、もう日は山の向こうに沈んでいた。家の後ろ側は雑木林で、近所には数軒の民家があるだけだった。
 先生は車から降りると家の中に入った。すぐに部屋に明かりが灯り、しばらくするとまた出てきた。先生は後部のドアを開けて、私を仰向けに抱き上げて運び出そうとした。大柄な先生にとっては、40キロそこそこの私は子供のようなものだった。縛られたままの私を軽々と抱き上げると、先生は一番奥の部屋の板敷きの床の上に私を仰向けのまま寝かせた。
「先生、縄をほどいて」
「いや、それだけはダメだ。おれはこれから出かけなきゃならない。お前がいい子にしててくれる保証はないからな」
 先生はまた何本かのロープを持ってきた。そのうちの太い一本を天井の梁に渡して、私を縛っている綿のロープの背中の部分とを結んだ。ロープが短いので、私は立ち姿になった。今度は短めのロープで私の足首をハイソックスの上から縛り始めた。さらにもう一本ロープを取り出すと、私の両臑を縛り頑丈そうなテーブルの脚の一つに繋いだ。ここまでしなくても……私は悲しい気持ちになった。それでもまだ終わらない。先生は私の口にティッシュをいっぱいに詰め込むと、手拭いの真ん中に玉をつくって猿轡にして噛ませた。体操着ブルマー姿のまま上から下まできつく拘束されている私に一瞥をくれると、先生は無言で出ていった。

 先生はなかなか帰ってはこなかった。初秋とはいえ山間部の夜は冷え込む。とくにむき出しの両脚が冷たくなってきた。ロープをきつく巻かれた手首や胸の周りはしびれ始めていたが、指先だけはまだ自由に動かすことができた。
 先生がいなくなって、私は冷静さを必死に取り戻そうとした。思えば母の交通事故を突然告げられ、信頼してきた先生にいまこうして手足を縛り上げられて監禁されている。なぜ? 先生は悪い人じゃない。私の確信はまだ揺らいではいなかった。子供には、大人の優しさは直感的にわかるものだ。小学校から9年間習字を習い、家の商売の手伝いにとそろばんを習った。誰に言われたわけでもない、自分の意思で通ったのだ。なぜこんなことになるの? 私は必死に考えた。
 先生は十何年か前、この地にやってきて塾を開いた。ここはよそ者に対して閉鎖的な田舎だ。とくに先生の風貌が悪い噂を呼んだ。白髪交じりの長髪に無精髭、作務衣を普段着にしている。それに先生は自分の過去をあまり語りたがらなかった。事業に失敗して関東から出てきたと一応言っていたが、ヤクザ者ではないかと。組関係者とトラブったらしいと言い出す人までいた。
 それでも先生の塾には生徒が集まってきた。下は小学生の男女から近所の主婦、定年退職した男の人まで。何か惹きつけるものがなければ、こんな郊外でよそ者の開いた塾が続くはずはなかった。そして意外にもと言うべきか、先生は女の子の信頼を集めた。私を含め皆自分の意思で集まってきたのだ。
 ふと、私はあることに思い至った。先生の塾はそこそこ流行ってはいたが、お金にはいつも困っていたらしいということを。先生は2度ばかりわが家で父と話し込んでいたことがあった。それはおよそ和やかなものではなく、父の怒鳴り声さえ聞こえてくるものだった。先生が帰ったあとも、父は怒りを露わにしていた。父はその訳を話さなかったが、お金が絡んだ話のようだった。うちの一族はこの近辺に多くの土地を持っていたし、商売もうまくいっていてお金に困るような家ではなかった。その父が塾の先生を怒鳴りつけるというのだから、子供心に話の内容は想像がついた。
 先生は、明日になれば私を解放してくれると言う。私の知らないところで何か交渉のようなことが行われていて、先生はそのために出ていったのかも。もしかして、身代金? 私はひどく悲しくなった。私は父が好きだけれど、先生も好きだ。たとえ今でも。その2人がお金のことで争い、その結果私がこうして縛られて監禁されているの? 辛い。涙が溢れてきて、その冷たい滴が私の太股に何粒か落ちた。


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