深夜の密会-1
照明が落とされた深夜の通路は静まり返っていた。
非常出口の緑色の照明は昼間の病院とはまるで別世界のように見慣れた院内を不気味に照らし出す。
何で緑色なんだろう?
ピンクとかオレンジとか、もっと明るい色にすれば私たちナースの気持ちも少しは和むのに…
それじゃあネオン街みたいでどこか如何わしい雰囲気になってしまうだろうか。
私、西山静香はナース歴7年。
このあたりでは一番大きなこの病院の整形外科に勤務している。
同期だった子たちは次々にいなくなって結局、私がお局様みたいになってしまった。
せっかく看護士になったのに仕事がつらくて辞めてしまった子もいるし、別の病院に移った子もいる。
看護学校以来の親友のサチホはクランケのいい男を捕まえさっさと結婚してしまった。
この際だからせめて深夜だけでもピンクの照明にしてはもらえないものだろうかと私は思ったりする。
この病院は先頃、少し離れた建物から移転したばかりでまだ新築の匂いがした。
私の知る限りまだ亡くなったクランケはいないと思うけれど、私たち看護士は深夜になると闘病の末亡くなった方の無念がどうしても拭えない。
そのせいもあって、宿直の時はなるべく部屋を離れないようにしているのだが、今夜私は不覚にもカンファに携帯を忘れてきてしまったのだった。
我ながら本当に腹立たしい…
その時だった。
柱の影にさっと身をひそめた白い影に私はついに凍りついた。
[ だ…誰?… ]
白い影はギシギシと音をたて、見る間に伸びて私の身長を越してしまった。
[ 見つかっちゃったか…
足が不自由だと思うようにいかないや。 ]
伊達さん…!?
整形外科の伊達さんだった。
私の病棟に入院しているバイクの事故で両脚を骨折して車椅子でなきゃ移動できないはずの伊達さんがそこにいた。