深夜の密会-5
伊達さんに手を貸してソファーに座らせると私も隣に腰を下ろした。
宿直の看護士は他にも三人詰めているし、整形なんてどうせ今夜も何もないけどあまり長居はできない。
[ こうやって長く入院しちゃうと…
何だか自分だけ置いてかれちゃうね。 ]
伊達さんは手を貸した時の私の手をまださりげなく握っていた。
[ 少し長引いたけどすぐに良くなるわ。
そしたらまたバイクにだって乗れるわよ。 ]
[ そうかなぁ…
何だかもう、前みたいにいかないような気がしちゃって…
それに、置いてかれた時間はもう取り戻せない。 ]
彼女の事を言っているのだろうか?
やっぱり何か事情があって彼女とは終わってしまったのだろうか?
[ そんな事ないわよ。
素敵なんでしょうね。
バイクで風を切って見る綺麗な景色って。 ]
[ 海沿いに走る夜明けの景色なんか最高だな。
西山さんにも見せてやりたいよ。 ]
意識してかどうか…
握った手に微かに力が入ったのを感じて、私はその手を握り返した。
[ ここに置き去りになって、気持ちだけ残った自分が惨めで仕方ない… ]
[ たまには…休まなきゃ。
いい事もあるわよ。 ]
熱い気持ちに私は思わず自分から伊達さんの唇に唇を重ねてしまった。
寂しい伊達さんの気持ちと長く一緒にはいられない焦り…
私の中にはそんなものが渦巻いていたに違いない。
[ ねえ…いつか…
私にも見せてくれる?
夜明けの海。 ]
[ いいとも…
でも、その前にバイクを修さなきゃ。 ]
[ その前に足も治さなきゃ… ]
無惨にもギブスで固められた彼の両脚から伸びた太ももをそっと撫でた。