深夜の密会-4
[ 今度の夜勤はいつ?
少しだけでもいいから西山さんと二人っきりで会いたいな… ]
[ まぁた、抜け出しちゃうつもり?… ]
[ いつもの事だし…
少しだけでいいんだ。
西山さんと一緒にいれたら気が落ち着くんだよ ]
[ …わかったわ。
明後日…零時に仮眠の交代なるから少しだけよ… ]
心の中でこんな事は妄想の中だけと分かっていたけど、私の本心は彼の言葉に思わず頷いてしまう。
看護士として特定のクランケに特別なケアを施すなんていけないと分かっていても、サチホだってこうして幸せを手にした事には違いないのだから…
そういえば、伊達さんが運ばれてきた当時は革ジャン姿のバイク仲間が毎日のように押し寄せていた事を思い出した。
今はもう、まばらにしか訪れない。
若い女の子も毎日のように来ていた。
その接し方から彼女のようだったが、その彼女も最近では一向に見かけなくなった。
伊達さんは孤独なのだ。
先生が傷のケアをするなら、心のケアをするのが私たち看護士の務めとして然りなのかも知れない。
不安と喜びの中で私はサチホに電話してみた。
サチホは明るい声でおなかの中に動きを感じると言った。
それから、事の次第を打ち明けると(いっちゃえ、いっちゃえっ!)と応援してくれた。
落ち着いた時にそれとなく病院まで伊達さんを見に来たいとも言ってくれた。
途端に私の中で幸せが逆転して明後日が待ち遠しい。
… … … …
約束の時間。
私は仲間に適当な理由をつけるとステーションを抜け出してこの前の一階にあるロビーへと向かった。
少し緊張はしているけど、緑色に浮かぶ非常口の灯りも今夜はときめいて見える。
柱の物陰にひとり、伊達さんの姿はあった。
[ 待たせた? ]
[ 西山さんは仕事があるんだから…
朝まででも待ってるさ。 ]
昼間の病室で見せる笑顔も素敵だけど、こうして非常口の灯りに照らされた伊達さんの笑顔も妖しく魅力的だった。