深夜の密会-2
[ 伊達さん…何してるんです? ]
金属製の松葉杖を器用に扱ってのそのそとこちらに歩み寄った。
[ 脅かしちゃったね。
眠れなくて…
ちょっと一服してたんだよ。 ]
暗闇で驚かされた私は少し腹立たしい感情が隠せなかったが足の不自由な不憫さと若い彼の甘いマスクに冷静さを取り戻す。
[ いけませんよ、こんな時間に出歩いてちゃ…
足がどんどん悪くなっちゃうでしょ。 ]
彼は悪びれた様子もなく、緑色に照らされた闇の中で笑顔を見せた。
[ 長びけば看護士さんといつまでも一緒にいられるじゃない。 ]
冗談と分かっていても頬を染める自分を感じた。
親友のサチホはこんな風にして、いい男を捕まえてもうすぐ一児の母なのだ。
もし、この伊達さんとなら私としても申し分ないのだが…
[ 何言ってるのよ。
さぁ、早く室に戻りましょう。 ]
携帯の事はさておいて、肩を掴まらせて支えた彼の肉体は分厚かった。
こんなに逞しい体をしているならば上腕筋だけでも4階からここまで這ってくるかも知れない。
まさに私のタイプである。
恐怖から一変して、うたかたの夢を見てしまう自分があまりにも儚い。
伊達さんを病室に無事送り届けたら、また最初から深夜の肝試しをしなければならない。
けれど、私は伊達さんの体重を支えていた事と思わぬハプニングに高まる胸の鼓動を残したまま、今度は伊達さんとのありもしないロマンスを夢見ながら深夜の病院を徘徊する事にした。