秘密〜何故〜-5
「何飲む?」
先輩の突然の問いに驚きつつ
「えっと、ホットコーヒー」
っと答えると
「オッケー」
っと、先輩はドリンクバーの方へ向かった。
「お待たせ」
先輩は私に、ホットコーヒーとミルク一つ、砂糖一本とティースプーンを渡してくれた。
「ありがとうございます」
私はせっかく持ってきて貰ったのに悪いなぁっと思いつつ、何も入れずにブラックで飲んだ。
先輩も自分用にホットコーヒーを持ってきて、一口飲んだ。
そして、テーブルに方ひじをつき、手のひらに顎を乗せ、ぼーっと店内を眺めはじめた。
「あの…」
私は沈黙に耐えられず、話しかけた。
「何でモデル代がコレなんですか?」
「イヤだった?」
「イヤじゃないで…」
私の言葉を遮り、先輩は言った。
「だよな!夢にまで見ちゃうくらいだもんな!」
先輩はニヤリと笑った。
「えっ…」
私は嫌な予感がした。
「あの写真撮った時、寝言でイチゴケーキだのフルーツタルトだの、ケーキの名前を言ってはよだれ垂らしてたから、この店なんか最適かと思って」
先輩はにんまり笑った。
「はは…」
私は渇いた笑いをし
(聞かなきゃ良かった!)
っと後悔した。
「さて、俺も何か取ってくるかな」
先輩が立ち上がった。
「先輩、甘いもの好きなんですか?」
「ん〜嫌いじゃない。
あれば食べるし、目の前でうまそうに食ってるヤツ見たら食べたくなった」
そう言って、先輩は取りに行った。
こうして、私はケーキをお腹いっぱい食べ、先輩は三つ程食べ、店を出た。
「ごちそうさまでした」
店を出て、私が先輩にお礼を言うと
「おう。じゃあ、気をつけて帰れよ」
そう言って、私が帰る道とは反対方向へ帰って行った。
私も帰ろうと歩き始めた時
(私なりゆきとはいえ、さっきのことは、先輩と『二人きり』でご飯を食べたことになるのか…?)
そう気付いた途端、固まってしまった。
っていうのも、前に篤也に『異性と二人きりでご飯とか行ってほしくない』って言われたことがあった。
なんでそんな話になったのかは忘れたけど…
私自身、篤也が女の子と二人きりでご飯とか遊びには行ってほしくない。
いくら『女友達』とはいえ、『二人きり』で行くことないじゃない?
だけど、私は今やってしまった。
篤也がしてほしくないって言ってたこと、しちゃった…
ひゅ〜っと風が吹いた。
季節は冬へ向けて、一段と寒さを増していた―─