『白雪=完璧?』-1
1 どうも、憲です。
現在、数式と言う夢魔の呪文で襲ってくる敵、『数学』と格闘中につき、手が離せません……。
『白雪=完璧?』
「まぁだ出来ないのかよぉ?」
俺の隣で白雪が暇そうにしている。
現在、ワークブックのP54の問2を解いている最中。終えるのに、まだ23ページも残ってやがる。
ここは、白雪の家の白雪の部屋だ。
夏休みも半分が過ぎようと言う日に俺は数学の夏休み課題を前に悪戦苦闘、白雪に助けを求めて今に到る。
「……間違ってるぞ」
「ぐぅ………」
既に三回は書き直した。書き殴った跡が残って、消しゴムを千切れんばかりに使うが消えやしねぇ。
「ほら、このページ終わったら休憩だから、さっさとやれ!」
「くそぅ」
見ての通り、俺は数学が、しいては理系の教科が大っ嫌いだ。(地学は除く)
現代文や、世界史日本史は得意なんだがなぁ。
ちなみに白雪は全ての課題を夏休みの最初の一週間で完璧にやったらしい。成績最上位とは言え、そんなに早くやるなんて夏休みの楽しみ方を激しく間違ってるぞ。
……と、ここをこうして……
「で、出来たぁ……」
「どれどれ……良し、休憩だ!!」
「エイドリア〜ン!!」
あぁ、ロッキーになった気分だ。強かったぜ、アポロ、じゃなくて数学。
「今、茶ぁ煎れてくるから待ってな」
そう言って、白雪は出ていった。
白雪の家はデカイ。俺の家の五倍は有ろうか。この部屋だって、俺の部屋の四倍はあるぞ。
ところが、この部屋は女の子とは言え白雪の部屋だ。普通じゃない。
普通ならヌイグルミとか、可愛い飾りなんかがあるんだろうが、白雪の部屋にそんな物を求めても無駄だ。
ヌイグルミの代わりに模造刀、壁には新選組の隊服やらが飾られ、本棚には少女漫画の代わりに時代小説が……あ、『龍馬がゆく』がある。読んだな、これ。『燃えよ剣』も。
テレビの下にはDVDが大量に詰まってる。
『暴れん坊将軍』に『御家人斬九郎』、『八丁堀の七人』……。つい最近、自分でビデオからDVDに移したらしい。
そう、白雪は根っからの時代劇好きなのだ。
初めて知ったときは俺も驚いたね。
尊敬する人が、徳川吉宗だもんなぁ。
「待ったかぁ?」
白雪がお盆を手に帰ってきた。お盆に乗ってるのは、緑茶に煎餅……、洋風な豪邸に住んでるのにトコトン和風なヤツだ。
「……………」
ずず〜っとお茶を飲みながら、俺と白雪は休憩タイムを満喫していた。現在、白雪はテレビに釘付け。
そのテレビでは『暴れん坊将軍』が映し出されていて、ちょうどマツケン扮する新さんが悪代官の前に現れた、一番の見せ場だ。
『余の顔を見忘れたか?』
『まっ、まさかっ!?上さま!!』
相変わらずワンパターンではあるが、確かに面白いと言えば面白い。流石に長年やってるだけあって、マツケンの殺陣はすげぇ速い。
『成敗!!』
あ、終わった終わった。
「やっぱ面白いよなぁ、憲」
「ん〜、俺はどっちかっつーと、斬九郎の方が好きだな」
「え〜……まぁ、確かに斬九郎も面白いけど、アタシはこっちの方が好きだな。見るか?斬九郎」
「いや、遠慮しとく。だいたい、いいのか?」
「ん?……何が?」
煎餅をくわえながら白雪は『暴れん坊将軍』のDVDをケースに戻した。って、お前が言い出した事ぐらい覚えとけよ……。
「……夏祭り、行くんだろ?」
「あぁ!そうだったそうだった。で、数学教えるかわりにおごってくれんだよな?」
「言っとくが、あんまり金は無いからな。今、貯金してんだから」
「何で貯金してんだよ?パーッと使えよ」
「俺の金だからって無茶言うな」
だいたいこの貯金はお前の為だってのに!
まぁ、今は内緒だ。秘密主義を貫こう。
「あやし〜な。アタシに隠して、裏で何企んでるんだ?」
「別に、隠してなんかいねぇよ。もうすぐ四時だぞ、どうすんだよ?」
「行く行く!!」
「じゃあ、一度帰るからな。舞姫神社で五時に待ち合わせな」
「わかった!!」