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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈国王篇〉後編-17

「カルサと比べると私の手の中にあるものは到底、数としては及ばないでしょう。でも決して少ない訳ではない。」

両手ですくうような形を作り眺めた。

「この国の民の命がここにある。彼らを握り潰す事など…絶対にあってはいけないんだ!」

この手の中にあるものを守る、それが幼い頃からの国旗への誓い。

「ハワード、お願いします!ここで私が死ねば国は完全に標を亡くしてしまう!私はこの国を守りたい!」

真っすぐな想いがハワードに向けられた。必死に想うが故か、潤った目が涙を流すまいと堪えているようにも見えた。



「カルサを身勝手だと思わないのか?」

静かに低く通る声がサルスとは対照的だった。サルスは首を横に振り微笑む。

「身勝手なのは私です。あとは任せろと、笑って送り出せない自分に腹が立つ。」

苦痛の表情を浮かべるサルスに、そんな事はないとハワードがすぐに否定した。

ハワードの気持ちに感情が高ぶり、思わずサルスは俯いた。やがて深呼吸が聞こえる。

「受けてもらえますか?」

顔を上げる、強い意志を持った眼差しは覚悟を物語っていた。それはまるで戦場に出向く兵士に似た顔つき。

「私は国の民全ての命を背負っています。一人たりとも落とす訳にはいきません!」

命をかけている、全身でそれを訴えていた。

「力を貸して下さい。お願いします。」

 全身に熱い思いが伝わってくる。

「老体を巻き込みますか。」

サルスの想いを受け、やっと出せた言葉だった。厳しくも寂しげな表情、それでも引き下がる訳にはいかない。

「はい。」

短く、だけど確実に気持ちを伝える。

逸らさない目、出せる答えなど1つしか用意されていない。ハワードは自分の右手に視線を落とした。

もしもの時は、この手でサルスを止めなければいけない。それは時として命を奪う事になるだろう。サルスはそれを望んでいる。今彼が一番恐れているのは、自分を失うこと。それによって誰かが犠牲になることだった。

「昔と何も変わりませんね、私達は。」

自分の手の中には常に国の民がいる、一人でも多くの民を守れるように強く、もっと強くならなければいけない。王位を継いでからカルサとサルスが誓った事、その想いは今でも変わらない。

そんな二人を自分の子供のように思い、見守ってきたハワードとナル。二人の気持ちも変わっていなかった。

あの子達を宜しく。

ナルの言葉が胸に響く。命をかけて国の未来を開こうとしたナル、その遺志を継げるのは自分しかいない。今までも、これからも何も変わりはしない。ただ自分が立つ、ナルを傍に感じることで勢いが増すだけだ。


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