半熟の供物-5
『あれ?何処か行くぞ?』
『あれは女友達と会う格好じゃないな……』
薄暗くなり始めた夕刻、萌は一人で何処かへ出掛けた。
真っ白のカチューシャ・乳白色のタートルネックのセーター・膝上の丈の青色のスカート・パープルのカラーストッキング・薄茶色のブーツ・ファー付きのピンクのコートを羽織り、胸に大きな箱を抱えて歩いて行く。
『これは…チャンスかもしんねえ……集合かけるか』
ケータイで連絡を取り合い、萌の行く先々に車を配置し、代わる代わる後を付けていく。
『ん?なんだ。コンビニじゃねえか』
中学校に行く手前にあるコンビニに、萌は歩いて行った……店前に三人の男子生徒が居たが、その生徒達に向かって歩いて行く……それぞれにミニバンは停まり、様子を伺う。
悠太「お、萌。用って何?」
萌「……あの、プレゼント……クリスマスだし……」
手紙を渡した時のように、ガチガチに固まりながら、可愛い包装紙に包まれた箱を手渡した。
萌「じゃ、また」
悠太「あ、萌!オイ!」
プレゼントを手渡し、逃げるようにその場を後にした……本当は友人が居たから止めようかと思っていた……それでも行動出来たのは、町に溢れる恋人達のように、悠太と手を繋いで歩きたかったから。
萌(渡しちゃった!…喜んでくれるかな?)
まだ心臓はドキドキと高鳴り、緊張は和らがない。
自然と出た笑顔は引き攣ってはいたが、それを隠そうともせず、町を歩いた。
『……あの生徒、加藤悠太っていうんです。結構女子に人気あるんですよ』
モテる男子が気に入らないのか、長髪男は吐き捨てるように話した。
『悠太か……よし、今から狩るか』
何か思い着いたように、男は声を張り上げ、ケータイで狩場の指示を出した。
町に架かる橋。
土手には細い道があり、河原には小さな空き地がある。
空き地と土手には二台、反対側の土手には一台のミニバンが停まっていた。
萌(そろそろメール来るかな?今から会おうって言われたらどうしよう……)
既に辺りは暗くなり、橋の照明が赤く輝く。含み笑いの萌が橋を渡りきろうとした時、一人の男が声を掛けた。
『あの……井上萌さんですよね?』
萌「……あの、誰ですか…?」
突然、暗闇から話し掛けられ、不信感を露にしながら萌は応えた。
『加藤悠太さんて知ってますよね?』
萌「……知ってますけど、何か?」
自分の恋い焦がれる男子の名を言われ、ドキリとしながらも、男の言葉に応えた。
既に笑みは消え、不安と緊張に表情は固まっていた。