逃げ出しタイッ!?-59
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「初めまして、宮川雅美と申します。訳あってこちらに転校してきましたが、皆さんよろしくお願いします。えと、特技といえるものはありませんが、趣味というかスポーツを見るのが好きです。特にサッカー! 見ごたえがありますよね。でも、音楽とかも普通に聴きますんで、そう考えると趣味ってないかな? あはは、結構いい加減な人ですけど、気楽に話しかけてくれると嬉しいです」
ふれあいの丘フリースクール。
地下鉄と電車を乗り継いで一時間弱の駅から徒歩十五分。
八階建てのビルの六階と七階に入っており、生徒は四十人程度。
大学資格検定の取得や、帰国子女の単位認定なども扱い、生徒によっては専門学校などのオリエンテーションを行っている。
不登校、いじめに遭った子たちを立ち直らせるための施設としかイメージしていなかった雅美だが、実際に教室に踏み入れて思ったのは、意外と明るいこと。
窓は大きく南向き。教室はそんなに広くないものの、少人数クラスのおかげで一人あたりの面積が結果的に広い。
入学前に見学したとき、生徒たちはみな何かしら目標を持っているのか、とくにまとまりもなく活動している。
参考書を開いてもくもくと勉強をしていたり、真剣なまなざしでイーゼルに向かったりとさまざまだ。
今もみな心を自分の興味に向けているのか、新入生に興味もなさそう。けれど、なかには真摯に雅美の自己紹介を聞いてくれる子がおり、その女子はにこやかな視線とたまに頷いてくれ、それが素朴に嬉しかった。
「えっと、よろしくお願いします」
もう一度頭を下げたところで、その子が立ち上がり手を差し伸べてきた。
ストレートのさらさらヘア。ちょっぴりつりあがっている目が猫を連想させるけど、どこかさびしそうな子。
「私は真澄梓。よろしくね」
「こちらこそ、真澄さん」
「ねえ、雅美さんはどこから来てるの?」
「うん、えっと……から」
「なんだ、近いかも」
「へえ、真澄さんも」
「もう、真澄さんなんてやめてよ、梓って呼んでよ」
初対面にもかかわらずおしの強い彼女はファーストネームで呼ぶように言う。
どこか苦手と思いつつも、彼女にはどこか自分と似ている雰囲気があり、反発する気持ちが生まれない。
「じゃ、じゃあ、梓!」
「なあに? 雅美」
満足気に頷く梓を見ると、雅美の中で何かが解けたような気がした。
少し前までがんじがらめに絡まり、結び目も見えなかったものが、緩み、肩が軽くなる、そんな気分。
「えっと、ここ、案内して。なんか同じ扉ばっかりでよくわかんないの」
「ええ、ついてらっしゃい……といいたいけど、私も最近きたばっかりだけどね」
「あらら」
「うふふ、それじゃ、探索でもする? ……ちょっとそこの貴方、鏡君だっけ? 案内なさい」
梓は少し考えたあと、イーゼルに向かう男子に声をかける。
鏡君と呼ばれた男子は一度驚いたように彼女を見るが、彼女の早く来いという手招きにほいほいとついてくる。