やっぱすっきゃねん!VM-1
甲子園予選決勝戦の翌日。青葉中は、明日の初戦を控えて練習に余念がない。
守備では内野手の連係や狭殺プレイ、外野からホームへの中継プレイなどのチェックを。
バッティングでは、バントや進塁打、カット打ちに時間を費やした。
初戦の相手は芦屋中で、昨年の県大会ベスト8の強豪校。
まさに、自分たちの実力を計るには絶好の相手というわけだ。
そんな守備練習のさ中、
「森尾ッ、和田ッ!」
監督永井が、正ショートの森尾と正セカンドの和田を呼んだ。
2人は駆け足で永井の元に立つ。
「何ですか?」
「和田はバッティングに回れ、それから、森尾はセカンドに入れ」
「セカンド…にですか?」
森尾の顔に戸惑いが映る。当然だと永井は考えを伝えた。
「おまえと秋川のコンビネーションをチェックするためだ。
元々、春先までおまえがセカンドでコンビを組んでただろう」
「…分かりました」
未だ、納得し難い顔を見せながらも、森尾はセカンドのポジションについた。
「行くぞッ!まず6‐4‐3だ」
強いゴロがショートに飛んだ。秋川は前進しながらバウンドにタイミングを合わせて、グラブで捕球した。
森尾は2塁ベースへと駆け込む。秋川はグラブからボールを掴み、小さく送球動作に入った。
森尾の位置はベース手前3メートル。秋川は躊躇なくベース目掛けてボールを投げた。
森尾の左足がベースを踏むと同時に、ボールがグラブ収まった。
森尾は右足で踏ん張ったまま身体を反転させると、ファーストの一ノ瀬へと送球した。
(あれから4ヶ月経つのに…なんて奴らだ)
永井の目には、完璧な連係に映った。
しかし、選手同士は納得していない。秋川が森尾に近づいて行く。
「今の、半歩遅かったぞ」
「分かってるよ。4ヶ月ぶりなんで、身体が鈍ってんだ」
渋い顔を見せる森尾。
「次は4‐6‐3ッ!」
内野の連係練習が延々と続く中、ブルペンの佳代と直也、それにセンターの加賀は、その様子をにこやかに眺めていた。