投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 405 やっぱすっきゃねん! 407 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VL-22

「…惜しかったね」

 帰り道、佳代が直也に云った。伏し目がちに、言葉を選んで。
 だが、直也の方は気にした様子もない。

「心配すんな。来年には兄貴がレギュラーになってる。その時は甲子園に行ってるさ」

 直也の答えに、佳代の気持ちも幾分、軽くなった。

「でも、あんな場面…わたしも同じようになるだろうなあ」

 9回のワイルドピッチを思い浮かべて、自らに照らし合わせてみる。

 その時、直也が云った。

「確かにパニクるだろうな…でも、ウチは勝てる」

 その自信に満ちた顔が、佳代には不可解に映った。
 そのあたりを訊くと、

「ウチにはな。達也がいるからさ」
「達也が…?」
「そうだ。オレは正直、アイツは嫌いだ。いつも冷静で、あんな友達甲斐のないヤツはオレとは合わない。
 でもな。アイツほど試合中に頼りになるヤツもいない。常にチームプレイに徹して、ピンチになったオレを励ましてくれる」

 意外とも思える言葉が返ってきた。

「だから佳代。アイツを信じろ。アイツなら必ず、オレ逹を全国に連れてってくれる」

 達也に全幅の信頼を寄せる直也。佳代には、ちょっと羨ましくなった。

「さっきの試合じゃ“達也も間違う”って云ってたのに?」
「あ、あれは…言葉のアヤじゃねえかッ。おまえにリードを教えるためのッ…」

 思わぬふりに慌てる直也。
 すると佳代は、はにかむように云った。

「…教えてくれて、ありがとう。おかげでさ、なんか自信ついたよ」

 そんな佳代を、直也は優しく笑っている。

「オレ逹は必ず行く。必ずな…」

 佳代も微笑んだ。

「ありがとう。頑張るよ…」

 今までは、チームの中での自分を考えていた。
 しかし、試合を通して、自分はチームに何が出来るかというふうに考えが変わった。

 明後日からの初戦。佳代の中に初めて“待ち遠しい”という思いが湧き上がった。
 それは、地区大会では無かったことだった。



…「やっぱすっきゃねん!」VL完…


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 405 やっぱすっきゃねん! 407 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前