『いつもの場所』-1
春休み等の長期の休みには、地方から少女達が大挙して都会にやって来る…そんな少女達の都会で受けた辱めが、表沙汰になる事は、極マレである。
あまり派手過ぎては怪しまれるが、あまり真面目過ぎても相手にされない。清潔感と誠実さの中に、程良いノリが必要とされる。外見など十人並みで充分、逆に色男は警戒される…
今日も、いつもの場所に立っていた…別にナンパをする訳ではない。俺の目的は、ただ一つ…狙いを定めた少女に近付き、声を掛ける。第一声で全てが決まる。
今日は獲物に、ありつけそうだ…
小柄でショートヘアーの、その少女は黒い薄手のセーターの上にジージャンを羽織り、グレーの膝丈の少しタイトなスカート、黒いストッキングにブーツ…少し背伸びをしたメークの奥に、あどけなさが残っていた…
少女の仕草、反応から巧みに話題を、少女の興味のある分野に摩り替えて行く…
俺の直感通り、電車で二時間程の地方都市から出てきたらしい…成り行きで俺の職業は、フリーのファッション雑誌のカメラマンになっていた…
思っていたより容易く少女を、歩いて五分程の部屋に連れていく事に成功する…
重厚な扉の奥に、生活感の無い空間が広がっている…バブルの遺産の様なこの部屋も、最近では手頃な値段で借りることが出来る…話しの流れで、スタジオを兼ねたオフィスという事になっていた…
石貼りの床に少女の歩が止まった…
「あっ、靴…そのままで良いから…」
ガチャ…扉が閉まり、俺は後ろ手で、扉に鍵を掛けた…
所在なさげな少女が、振り向いた…
次の瞬間、少女のミゾオチに一撃を加える…
鈍い音と共に少女が俺に凭れ掛って来た、そのまま肩で担ぎ上げ部屋の奥へ…自然に頬が緩む…
そのまま寝室に直行すると、少女をベットに横たえる…
先ずは、記念撮影…カメラマンのそれとは、程遠い簡素なデジタルカメラのシャッターを切る。
次に少女が肩から下げていた、ブランド品の黒いナイロンバックを物色する…俺は、物取りでは無いので財布など興味の対象外である…ゴソゴソとバックの中をカキ回すと…あった、あった、オレンジ色のパスケースの中に学生証と原付の免許。
テーブルの上に置き接写した後で、横たわったまま、未だ意識の戻らない少女の胸元に二枚のカードを置いて再びシャッターを切った…