『Summer Night's Dream』その4-5
「今日はどこに行ってきたんだ?」
「学校。じいちゃんは?」
「パチンコだ」
忌々しげにそう呟く。
何だ、また負けたのか。
親父と一緒ではないと言うことは、どうやら一人で帰ってきたらしい。
「もう止めなよ、向いてないんだよ、きっと」
「遊びの範疇は越えとらんから心配するな。お前こそ夜遅くに出歩くのは感心せんぞ」
「こっちは遊びじゃないんだ。部活なんだよ」
と陽介は言い返した。
「部活って……あの訳の分からん怪しいクラブか?いったい何をやっとるんだ?」
「……………」
今度は言い返せなかった。
というか、陽介達のやってることを話しても、この人は半分も理解できないと思う。
ただ心配してくれてるのは分かっていたから、何も話さないのは申し訳ないと思った。
「ねえ、じいちゃん……」
「ん、何だ?」
「じいちゃんは、死ぬ前にやり残したい事ってある?」
そんなことを聞いた途端……じいちゃんは口をポッカリと開けたまま、
「バカヤロウ!縁起でもないこと言うな!」
って言って頭を小突いてきた。
いてぇ。
「全く……何てこと言いやがる、このガキ」
じいちゃんが怒るのも無理はなかった。
七十を超える人に向かって言うことではない。
ただ、亀の甲より年の功と言うのなら、何か良いヒントが聞き出せるかもしれないという、淡い期待のような物があった。
「……ゴメンナサイ」
「さっきの部活に、それが関係あるのか?」
「まあ、そうかな……」
陽介が頷くと、じいちゃんは改めて首を捻りだした。
どうやら、真面目に考えてくれるらしい。