『Summer Night's Dream』その4-3
「やだ、目半開きになってる」
「そうじゃないって。ほら、二列目の棚の所が……」
あ、と画面越しにさくらが言葉を失った。
彼女の足下にほど近い棚の一部分がわずかに、目を凝らさなくては分からないような儚さではあるが、わずかに、発光していたのだ。
それが明らかに普通ではないことは、陽介にも分かった。
「なあ、これってもしかして……」
「…………」
もしかしてもしなくても、間違いない。
暗い室内。
月の明かりだけが、ぼんやりと画面を照らしている。
なのにこの発光体は、反射というにはあまりにも不自然な位置。
ただそこに居座る様にして、不気味に光っている。
…図らずも陽介は、超研の当初の目的を達成してしまった訳だ。
でも、ここに写ってるのはそれだけじゃない。
さくらもいる。
普通に考えれば、こんな写真を撮られていい気はしないだろう。
「早く消そう」
陽介はそう言って、写真を削除しようとしたが、さくらがそれを遮った。
「どうした?」
「…………」
さくらは無言で、画面を見つめていた。表情からは、その真意は読み取れない。
やがて、おもむろに立ち上がると光の写った場所を調べ始めた。
陽介も後を追って後ろから様子を伺う。
そしてさくらが一冊の本を取った時、その隙間から何かがこぼれ落ちた。
「………花?」
ひらりと舞い落ちた青い花。
陽介がそれを拾い上げる。
「何だろう、しおりにでも使われてたのかな?」
「わすれな草よ、それ」
「へえ、よく知ってるな」
「家にお花の先生がよく来られるの。春に咲く花よ」
さくらがそう説明してくれたけど、ひまわりかチューリップくらいしか知らない陽介からしてみればいまいちピンとこない話だった。