白銀のたまご〜パチプロチーコの生活5-11
サワちゃん、きっとお金に困ってるから私のウチコになってもらおうと思ってた…
シンちゃんはサワちゃんに関わるなと言った。
すっかり忘れていたその意味が重くのしかかる。
いたたまれない気持ちで私はシゲルの隣りに座ってみたのよ。
心外に思うかしら?
知ってる人が、いま目の前で捕まっちゃったのにあなたはパチンコなんかしていられるのかと思うじゃない?
あなたならこんな時、お仕事を休んじゃうかしら?
ご飯を食べないでじっとしゃがんでいられるかしら?
パチプロにとって、パチンコは自分ができる精一杯の事なのよ。
精一杯するべき事がパチンコなの…
[ 来てたの? ]
シゲルは画面を見ながら話しかけた。
[ うん、さっきね… ]
私もガラスに映る自分に向かって答える。
[ なんだか騒がしかったけど…何かあったの? ]
[ さぁ…ケンカじゃない? ]
弾き出された玉の動きにもう、目がついていかない。
釘が見切れない。
確かに馴染みのない機種ではあったけど、当たる気がまったくしなかった。
[ ところでさぁ… ]
この声色は…ボンビー1号。
[ 2万円回してよ ]
[ やめなさいよ!
それ、もう噴かないわよ ]
[ 言うなよォ!
チーコが言ったら信憑性あるじゃないか… ]
黙ってシゲルに2万円渡すと私はそのままホールを出て行った。
私をパチプロに育てたテネシーのロビー…
もう、何もかもが辛くてここには座れない。
シンちゃんやサワちゃん…
ヨコケンに立川のオヤジ…
ここで一緒にしのぎを削った顔が次々に目に浮かんできた。
さよならテネシー…
さよならパチプロチーコ。