年末のガール-1
「あれ?ここどこ?」
辺りを見回すと一面に白いモヤモヤがかかっていてよく見えない
とりあえず歩いてみることにした
ずんずん
ずんずん
それでも景色は変わらない
(・・・なんだ。夢か)
私は小さい頃から夢の中で、「あぁ、これは夢だ」と気づくことがよくある。今回もそのパターンだろう
一度夢だと気づくとこっちのもんだ
この白いもふもふした世界を満喫してやろうじゃないか
そのまま時々飛んだり跳ねたりしながら進んでいくと、いつのまにやら近くによぼよぼの爺さんが立っていた
(あーあ、爺さんか。せっかくならイケメンでも出てきたらいいのに)
「イケメンじゃなくて悪かったの」
あっ、喋った
もう目の前にいる爺さんは間近で見ると仙人のような格好をして汚らしい
「お前さんは時田優子じゃな。時田優子という存在は2009年12月31日にこの世から消えてなくなる。せいぜいあと1ヶ月残された時間を楽しむんじゃな。ワシの言ったことを信じれないかもしれんから、まぁ1つ予言をしといてやろう。今日お前は・・・」
「おい、爺何言っ・・・」
あれ
気がつくとベッドの中で
右手は何かを掴むように振り上げられてて
「・・・馬鹿らしい」
持て余した右手をにぎにぎしながら呟いてみても、あの爺の言葉は頭の中でグルグル回っていて
そういえば最後に何か言いかけてたな
今日何が起こるって?
・・・
はー
こんなこと考えてる場合じゃない
早く会社行かないと
私は朝ご飯も食べずに、さっさと用意をして玄関のドアを開けた
ぐにゅっ
・・・ぐにゅっ?
そろそろと靴の裏を見ていると、そこにはまさに新鮮な犬のアレがついていた
「今日お前さんは朝っぱらから犬のウンコを踏む。運があったの」
楽しそうな爺の声が頭の中に響く
なんだこれ
なんだこれ
足に犬のウンコをくっつけたまま、私はドアの前で立ち尽くした