僕とあたしの海辺の事件慕 最終話「色褪せても大切な日々……」-16
「あはは、ゴメン。だってさ、酔ってたし、わかんなかったんだよね。それに、誰か来たッぽいし……」
「それってまさか亮治さん?」
「んーん、女の子。澪ちゃんでも無いし、多分沙希さんじゃない?」
「沙希さん? なんでだろ?」
そういえばワインセラーでワインが無くなるとか何とか……。つまりは内部の犯行だろうか?
「まあ、そういう事よ。んでもさ、結局絵のことは分からずじまい?」
この話はこれでおしまいと逃げ切りを始める理恵。それはほか二人にも都合が良いらしく、すぐさま神妙な面持ちになる。
「あの絵は……、見ての通り東と西の灯台両方が描かれてました」
「うんうん。それで」
口を開く真琴に理恵も澪も興味津々の様子で頷き、
「その絵の真ん中がヒントだって言うのなら、それは多分二点の中心……」
顎に当てた手で考えるポーズをしばし、
「まさか海岸に隠してあるとか?」
思いつきを口にするも、それは絶望的な結末。もしも砂浜にあるというのであれば、それは当時であっても絶望的。探すどころの話ではない。
「いえ、あくまでも描いた場所の中心。つまり、ペンションの中です」
「へえ、言い切るってことはつまり、真琴君は見つけたってことでいいの?」
真琴はそれに頷かず、ただ一枚の手紙を取り出す。
「えと、そのことなんですけど、理恵さんのお父さん、公務員ですよね? もし良かったら調べてほしいんですけど……」
「ん? 手紙? それってまさか……」
「ええ、あのペンション、シンメトリーでしょ? だからその中心を探したんです。
そしたらポストの中、天井が壊れて二重になっていて、そこに隠してありました」
「そう。へ〜」
理恵は黄ばんだ手紙をしげしげと見つめつつ、裏返す。
「あ、名前!」
何かに気付いた澪は声を上げる。
古びた手紙の裏、差出人の名前が見える。
そこにあった名前は……
進藤妙
どこかで聞いたような名前であったが、真琴は眼をつぶって首を振るだけ。
肝心なところはいつも教えてくれない幼馴染が、少し格好付けだと思う今日この頃だった。