僕とあたしの海辺の事件慕 最終話「色褪せても大切な日々……」-15
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海辺のペンションで起きた事件は、管理人である亮治の捕縛で幕を閉じた。
彼は久弥がそこまで利益追求をしていないのをいいことに、ペンションの維持費の一部を借金の返済に充てていたらしい。しかし、その額は七桁程度で、明るみに出にくかった。
さらに、おとといの夜に弥彦が帳簿を見ていた際、自分の不正経理がばれたと思い込み、夜逃げの準備をしていたらしい。
しかし、弥彦が崖近くを歩いているところを見て、そのまま殺害、隠匿を試みた。
けれど文宏の邪魔が入り、さらに岩礁地帯に行こうとしていたところを公子に発見されるなど殺害には及ばなかった。
そのため、弥彦の移送は認めても殺害は否定に転じた。
しかし、横領、不正経理の罪は免れることはなく、久賀久弥の制裁を待つことになるのだろう……。
その際、老人の目は今もなお、現役を示していたのは言うまでも無い。
「さすが真琴君ね。今回も見事……うーん、まあ半分ってとこかな? 私のフォローなしじゃ追い詰められなかったぽいしね」
帰りの電車に揺られながら理恵は楽しそうに呟く。今回も功労者である彼女は真琴に無理矢理おごらせたアイスコーヒーを片手にいう。
本当はまだ避暑地に滞在していても良かったのだが、美羽と文宏の熱に中てられ恋人に会いたくなったらしく、帰ることになった。
「あはは、でも澪、僕達のがアリバイを崩す……いたっ!」
「アホか!」
真琴のセクハラ的発言を言い終わることを待たず、澪の鉄拳制裁が飛ぶこととなる。
「だって……澪の……」
「うふふ、まあそうかもね。私もあんまり自信が無かったし」
ストローに口を付ける理恵は意味深に微笑むので、何か裏があるのではと勘ぐる真琴。
「コーヒーに塩は合わないしね」
「コーヒーに塩? そういえば理恵さん、あの日って二日酔い……」
二日目の朝を思い出すこと数秒、二日酔いに悩まされていた理恵はどこにいたのか? それは当然酒のある場所。つまりはワインセラー……。
「理恵さんはずっとワインセラーにいたんですか?」
だとすれば亮治のアリバイが嘘であることを見抜いて当然。
「えへへ、そうなの。だから変だなって思ってさ……」
「理恵さん! もう、恥ずかしいじゃないですかあ。いくら皆知ってるからって、改めていわなくたって……」
悪びれる様子なく笑顔の理恵。真琴も急に恥ずかしくなったらしく、裏返った声で批難しだす。顔を真っ赤にさせた澪は目に涙を浮かべながら理恵にしがみ付く。