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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 最終話「色褪せても大切な日々……」-12

「業務用のパラソルの骨に弥彦さんを乗せ、浮力を借りればいくら弥彦さんでも運ぶことはできます」

 真琴の発想はどこか稚拙。けれど可能ではある行為。ただ、一つ気になることがある。

「ふむ、しかし、どうして運ぶ必要があったんじゃ?」
「ええ、それは僕も考えました。実はあの岩場、遊泳禁止区域なんですよ」
「それがどうかしたの?」
「しかも漁場とも離れている。つまり、人気の無い場所。もし公子さんが気付かな
かったら、きっと発見されることもなく……」

 意味深に言葉を飲み込むと弥彦はブルると身を震わせる。

「おいおい、真琴君。それは突飛すぎないか?」

 腕を組んでいた和弥が話を遮るように前に出る。とはいえ彼もどこか腑に落ちないところがあるらしく、真琴の推理を止める様子はない。

「百歩譲って弥彦を殺そうとしたとして、どうして運ぶ前に殺さないんだ? それにまどろっこしいことをしては意味が無いだろう?」
「それは多分、文宏さんのせいです」
「え? 俺? 俺何かしたっけ?」

 急に話を振られた文宏は日焼した肌と対照的な子供っぽい瞳を白黒させる。その隣では美羽が心配そうに手をこまねいているので、真琴は「心配ないです」とにっこり笑う。

「犯人は弥彦さんを突き落としたあと、崖を降りた。けれど、近くには真の不審者である文宏さんが居る。突き落とした理由は不明ですが、行為から考えれば殺意があってもおかしくない。このまま弥彦さんを置き去りにもできない。だから運んだ」
「なるほど」

 ある程度納得したらしく、和弥はふむと頷き一歩下がる。

「それに文宏さんが灯台近くで夜を明かしていたとき、犯人を見たんですよね?」
「ああ、そういうことなのかわかんねーけど、でも二人を見たのはたしかだ……」
「多分、そのおかげで弥彦さんは殺されずに済んだんです」
「なんと……それじゃあこのガキ……じゃなかった、文宏さんは俺の命の恩人?」

 弥彦は手の平を返したように平謝りを繰り返し始めるが、文宏もどう対応してよいのかわからず、ただ「あ、いえ」とくりかえす。

「だけど、一体誰がそんなことを?」
「それは多分、弥彦さんや僕、えと澪もかな? 僕らが邪魔な人だと思います」
「君たちが邪魔? もしかして君たちも命を?」
「いえ、僕と澪はそこまで……。せいぜい驚かされたぐらいじゃないですか? 例えばあるハズの無い怪談話。お化けの声……とかね?」

「お化け……ねえ」
「お化け……か」

 理恵と久弥は互いに罪を擦り付けるように視線を交差させるが、真琴はそうじゃないと手を振る。

「久弥さん。このペンション、ホネオリって昔は接骨院かなんかでしたんでしょ?」
「ほっほっほ。まあそうじゃな」
「ええ! 嘘、ハンセン病は? 死体を捨てた海って……」

 久弥の老獪な笑いに澪が驚いたように声を上げる。そしてきっと亮治を睨むも、彼は「盛り上げる為」と困ったようにいい訳する。

「多分、澪を怖がらせて僕らを早く帰らせようとしたんじゃないのかな?」
「ほうほう。で、何故犯人は君らを?」
「それは多分、絵の秘密を探していたのが問題なんですよ」
「絵の秘密? しかし、それじゃとワシもじゃよ?」
「正しくは絵の秘密を探るとき、あるものを見てしまった。それは多分……」


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