やっぱすっきゃねん!VL-5
翌朝。
青葉中のメンバーは、〇〇市営球場に来ていた。
元は戦後、アメリカ空軍の基地があった場所だったのだが、撤退と同時に市民の憩いの場所となった。
それから20年ほど経って、誘致されたプロ球団の二軍練習場や球場が建てられた。
今では海水浴場なども設けられ、過去の遺産は幅の広い侵入路だけとなっていた。
そのメイン球場とサブ球場を用いて県大会が行われる。
「選手入場ッ!」
アナウンスと共に、選手逹が入って来た。先頭は昨年優勝の沖浜中。
それから、次々と各地区大会を制したチームがグランドに現れる。その度に、スタンドを埋めた観客から喝采が上がった。
「尚ちゃんッ!あそこ」
「どれ、どれッ!」
もちろん、先生達や生徒会、学校OBに父兄からなる青葉中応援団も、現れた選手達に観客席から拍手を送っている。
(…なんだか、凄いとこ来ちゃったなあ)
入場行進の最中、佳代は辺りを見回した。
地区大会のあった球場の比ではない。グランドの広さも観客席の多さも、はるかに上回る規模だ。
(外野の芝生も深いし、内野の土も地区大会のと違う)
二軍とはいえ、プロが使う球場の素晴らしさに改めて感嘆する。
(こんな良い球場で、たくさんの人に囲まれて野球が出来るなんて…)
感激に胸を熱くする佳代に、となりを行進する直也が云った。
「ここが終わりじゃねえぞ。ここから始まるんだ」
「…そうだった」
喜びの目が、すぐに厳しくなった。
「佳代ッ、行進しながら緊張してたでしょ?」
「違うよッ、ちょっと驚いてただけだよ」
開会式を終えた青葉中野球部員は、しばしの間、応援団達と談笑していた。
「ウチはいつ?」
「3日目の第2試合。日曜日だからさ、有理ちゃんも見に来てよ」
「尚ちゃんと必ず行くから」
緊張をほぐしてくれる友達は、佳代にとって、かけがえの無い存在だ。
そんな、他愛もない話をしていると永井の掛け声がとんだ。
「全員集合ッ!」
部員全員が、一斉に永井の元へと集まりだした。
「ごめんッ」
佳代も尚美と有理を置いて、慌てて列に加わった。
永井は部員達を見渡し、穏やかな表情で口を開いた。