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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-34

「大丈夫。幽霊の正体は僕だから!」
「真琴が幽霊なの? どうして?」

 澪は幼馴染の困った発言に困惑を強めてしまう。けれど真琴は得意そうに胸を張り、薄い胸板をドンと叩く。

「それじゃあさ、澪がここに居て。そして……、このパイプかな? それに耳を当て」

 真琴は外れかけた手すりを指差し、耳を当てるようなジェスチャーをする。

「それが何か?」
「いいからいいから」

 昔から勘が鋭い彼なら何かに気がつくかもしれない。そういう期待をしていた澪は彼の自信ありげな言葉に黙って頷き、一人で廊下に残ることにする。
 もちろん、暗い部屋で一人待つよりもずっと良いという打算あってのことだが。

 実のところ、真琴は幽霊話など信じていなかった。また、ペンションに来て真琴はあることを思っていた。
 元病院であるこの建物には手すりのようなものがある。老若男女問わず利用する施設ならそれも当然のこと。さらに言うと、名称からここが何科であるかもある程度めぼしをつけていた。

 ――えっと、多分、ふふふ、そうだと思ったんだ。

 壁に回っている鉄製の手すりをぐるりと見て一人笑う真琴。そのうちに手すりの一部分、少しずれて空洞が見えているところを見つける。

 ――きっとそうだと思った。

「みお。僕だよ……聞こえる?」
『嘘! 真琴?』

 返って来たのは甲高い女の子の声。ややノイズと山彦のようなエコーがかかっていたが、それはまさしく澪のもの。

「ふふふ、この手すりの中で声が反響して伝わってるんだよ」
『……なーんだ、そんなことだったの』
「怖かったくせに……」
『うるさいわねー! 今からそっち行くから覚えてなさいよー!』

 含み笑いもしっかり伝わったらしく、はなはだご立腹の様子がしっかりと伝わってくる。

 ――やぶへびだ……。

 とはいえ、やってくるのは幽霊ではなく愛しい澪。
 たとえ怒っていてもその気持ちが自分に向くのなら?

 ――僕ってマゾ? 違うよね?

 真っ赤になって腕を振るう澪が来ると分かっていてもいそいそとしてしまう自分が抑えられない真琴であった。


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