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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-32

「ふむ、文宏君よ、君は警察には行きたくないのじゃな?」
「ハイ。どうかそれだけはご勘弁ください……」
「そうか……なら、ちょいと留まってもらおうかの。このペンションに……」
「へ?」
「お父様?」
「いいの?」

 おかしな提案に驚きを隠せない一同。確かに力仕事ができる人員がいるのは良いことだが、素性は美羽の恋人としか分からない相手をどうして留まらせるのだろうか?
 この判断には文宏自身呆気に取られていた。

「構わんよ。まあ、雑用、主に肉体労働をしてもらうがの。とりあえず、今日は弥彦の部屋でも使うといい。美和君、案内してやってくれ」

 そういうと久弥は立ち上がり、「ほっほっほっ」と高笑いをしながら部屋を出て行った。

「おじい様も何を考えているのかしら? ま、変なこと考えたら……分かってるわよね?」

 まだアルコールが残っているのか顔の赤い理恵だが、技の切れは証明済み。むしろ力加減を考慮すれば、酔っているときこそ注意が必要なのかもしれない。

「ま、美羽ちゃんが一緒にいれば変なことはしないわよね? それとも変なことしてたりする?」

 意味深に笑う公子はついでに真琴と澪のほうも見るが、二人は顔も合わせない。
 からかってもつまらないと公子と理恵はそのまま部屋を後にするので、美羽も文宏に肩を貸しながらそれに続いた。

「えっと……、あたしも仕事思い出した!」

 いたたまれない空気に沙希は濡れた髪を指摘される前に部屋を出る。
 部屋に残された澪と真琴はしばし無言のまま明後日の方向を見るばかり。けれど言い難い引力がそれを不自然にさせる。
 時計を見るたびに視界がお互いを捉えようと動き、物音を立てるとその素振りを隠そうとわざとらしく咳払いをしてしまう。
 クーラーの止まった部屋は蒸し暑く、汗がふつふつと沸いてくる。

「あのさ、真琴……お願いがあるの」
「何? 澪!」

 自然を装ったつもりが内面から沸き起こる嬉しさのせいでつい大げさに声を上げてしまう。

「今日、一緒に寝てほしいの……」

 ぼそりと呟く澪は目を合わせず、それでも手を繋ごうと右手を伸ばしていた……。

◆◇――◇◆

「あのね、さっき人の声が聞こえたの。恨めしそうな、そんな声がさ……」

 枕をぎゅっと抱きしめて真琴のすぐ後ろを歩く澪。

「あ、勘違いしないでよ? 怖いわけじゃないんだから。その、こういうの、真琴好きかなーって思ってさ……」

 強がる素振りを見せるも、ギシリと音がするだけで視線がそっちへと向ってしまう。

「んー、僕もそういうのは好きじゃないんだけどなあ」

 二〇三号室と書かれたドアの前に来て苦笑気味に言う真琴。それでも澪から話かけてくれたのが嬉しいのか、にやつきが零れてしまりが緩くなっている。

「あら、情けないわね。いい? 男っていうのは幽霊やお化けの一つや二つ、怖がってちゃいけないのよ!」

 齢十七になって心霊現象に悩まされている女子が言ったところでそれも説得力にかけるというもの。けれど長い付き合いのせいかその強がりも「いつもの澪」を連想させるイベントであり、ペンションに来て久しぶりに安堵できる雰囲気だった。


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