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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-3

「え、もしかして誰か来たりしないわよね?」
「分かりません」
「一応、鍵閉めとくね」

 用心するに越したことはないと、公子は早速鍵を掛ける。もし新たな不審者が来ても困るので真琴も反対はしなかった。
 窓の外には何もなく、ただ広い空が続いていた。
 下を見れば海が広がっているが、人はみなアリンコサイズに縮小されており、波を器用に乗りこなすサーファー達はアメンボに見える。

「ねえ……真琴君」
「はい?」

 トーンを落とした公子の声に「なんだろう?」と振り返る真琴。彼女は並んだ椅子に座り、わざとらしく足を組みかえる。

「君、澪ちゃんだっけ? 彼女なの?」
「え、あ、そんなのどうだっていいじゃないですか」

 急にふられた話題にどう答えてよいのかわからない。彼自体恋人になれたと思ったら手の平を返され、かと思えばキスに応じてくれる歪な距離。

「どうなの?」
「恋人じゃないです」

 認めたくないが、澪が「待ってほしい」というのならそれも仕方がない。恋愛は互いの意思疎通の本に成り立つ行為なのだし。

「そうなんだ。でも昨日は……うふふ」
「うっ……」

 昨日のことは公子の耳にもしっかり届いていたらしく、彼女は真琴の表情を覗き込むように前のめりになる。

「君みたいな可愛い子が童貞じゃないなんて……おばさん、ショック」
「おばさんなんて、公子さんは全然若いですよ……」

 視線に耐えられなくなった真琴はそっぽを向く。しかし、狭い展望室では逃げ回るとも出来ず、またこの場を打開する方法も無かった。

「あら嬉しい。お上手ね、真琴君も……」

 ゆっくりと立ち上がる公子。対照的に背を向けて窓辺へ逃げる真琴。

「どうして逃げるの? なにもとって食べるなんてしないわよ?」
「なんとなく」
「ねえ、真琴君……、二人は付き合ってないのよね……」

 質問の意図が分からず、ただ雰囲気に圧されてゴクリと唾を飲み込むのがやっと。

「ええ、ですけど、ほら、探し物……しないと……」
「探しモノなんて見つかりっこないわよ。何十年も前のことだもん」
「そうかなあ、僕は……まだ……あると……」

 割れた窓からたまに吹きこむ風だけが空調設備のこの密室において、手を伸ばせば触れられる距離というのは暑苦しい。また、昨日今日あったばかりの人にパーソナルスペースに侵入されるのも快いことではない。


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