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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-2

「それより真琴君は何をしていたの?」

 頭一個背の高い彼女は前屈みになって顔を見てくる。

「えっと、絵のことを調べようとおもって……」
「ふうん。絵ねえ……。私はパス。頭使うの苦手だし」

 舌を出して笑う彼女はどこか子供じみている気がする。

「父さん、今も仕事仕事ってしてるけど、母さんが亡くなってからはやっぱり寂しいみたい。だから昔のこととか急に穿り返してね……」
「はい。でも、素敵じゃないですか。昔の女性のラブレターを探すなんて」
「女性? ラブレター?」

 目を丸くして聞き返す公子は、意外性と好奇心に満ちた眼差しを向ける。

「あ、いや、そのラブレターかどうかは分かりませんが、でも多分そうなんじゃないかな。だって久弥さん、女性のために絵を描いたんでしょ?」

「ああ、そういえば女性のためとか言ってたわね。でも、なんで父さんが持ってるのかしら? 普通誰かのために描いたのならプレゼントするんじゃない?」
「それは多分……」

 いいにくそうに視線を下げる真琴。後手で後頭部を描くこと数回、公子もようやく気付いたらしく「ふふ」と笑う。

「振られたのね、父さん」
「多分」

 しばし笑いあう二人。もしこの場に久弥がいたらどうなるのだろうか?

「でも、君が謎解きをしてくれるとなると父さんも張り合いがあるかもね。それで?
 今度はどこを探すつもりだったの?」

 本題に戻り、真琴は東の灯台を指差す。遠目には気付かなかったが、外装もかなり剥げており、白とコンクリートの青みがかった灰色がまだらをなしている。

「えっと、あの絵にあった灯台をちょっと見ておきたくって、それで……」
「のぼってみるの?」
「ええ、でも……」
「まあいいんじゃない? 誰も見てないし……」

 いつの間にか亮治の姿は無く、代わりに丘で羽を休めるウミネコが数羽。それらも真琴の視線を感じたのか飛び去ってしまった。

「それじゃ、少しだけ……」

 黄色と黒のロープを跨ぎ、二人は階段を登ることにした。

**

 地上おおよそ十二メートルの高さの灯台を上る方法は螺旋階段のみ。しかも、一段一段が高く、狭くてのぼりづらいものだった。
 西の灯台が解放されていないのはそれが原因だろう。
 二人は息も絶え絶えになりながらようやく展望室へと入る。
 中はこれまた狭く、テーブル一つに椅子が四つ、おそらく制御の為の機械なのだろうモノが並んでおり、どれも動きそうに無かった。

「なんか、つまらない場所ね……」

 公子は散らかった部屋を見てため息をつくだけ。
 しかし、よくよく見れば違和感の多い部屋でもある。
 割れた窓から潮風が入りこみ、黴臭さや埃臭さはなく、かわりに錆びのような匂いがする。また最近人の出入りがあったのか、三つの椅子が不自然に並んでいたりと妙な感じがした。

「誰かいたのかな……?」

 椅子を念入りに調べるとごはん粒のついた包装紙が落ちている。その粒は干からびているものの、まだ新しく、おそらく昨日から今朝にかけてのものと予想する。


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