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僕とあたしの海辺の事件慕
【ラブコメ 官能小説】

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僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-14

 ――多分、犯人は弥彦さんをここに運んで……殺すつもりだったんじゃないかな?

 彼自身突飛な発想と思いつつ、人目につかない場所に運ぶというのは何かしら意味があってのこと。
 ただし、推測の域を出ないのは、弥彦が殺されなければならない理由。

 ――どうしてだろう?

 一人首を傾げる真琴。すると背後で波をかき分ける音がして……、

「はぁ……真琴さんだっけ? こんなところで何をしているの?」

 振り向くと紗江がいた。従業員の野暮ったいブラウスにエプロン、タイトスカート姿ではなく、クリーム色のフリルの付いたキャミソール。風が吹くと裾が捲れ、素肌にピッチリ張り付くハーフパンツが見えた。

「えっと、紗江さん? どうしてここに?」

 むしろ彼女こそこんなところで何をしているのか? 真琴はその言葉を飲み込むことにした。

「君の姿が見えたから追ってきたの」
 ――見えたら追うって? どういう事?
「で、何してるの? 絵のことを調べるんじゃないの?」
「あ、いえ、ちょっと、その、弥彦さんのことで気になったから……」

 休憩中なら他にも暇つぶしの方法もあるだろう。ただ、普段から海を眺めている彼女にとってみれば、絵の謎を解こうとする真琴の方が好奇心の対象になりやすいのかもしれない。

「多分、弥彦さんはここに運ばれたんですよ」
「ふうん。でも、どうやって? 誰が? どうして?」
「それは、まだどれも分かってませんけど……」

 いきなりの質問攻めに真琴は答えに窮する。

「でも、真琴君はここにいる。探偵ごっこ? たのしそうね。あたしも協力してあげるわ」

 紗江は真琴の様子を伺うように覗き込み、「いいでしょ? ね、いいでしょ?」と聞いてくる。
 眼鏡の奥に隠れた目は少し冷たい感じの印象のある切れ長のモノ。仕事中は三編みにして整えている髪もプライベートのときは解いており、可愛らしくカールさせている。
 そして、前かがみなると布地の少なく、肌にゆったりとした衣服は……。

 ――結構大きいんだ……。

 隙間から見える水色のブラジャー。小一時間ほど前に見たそれと比べれば小振りだが、それでも発達途中のものと比べれば充分な大きさ。

「ねえ、いいの? どうなの?」

 じれた紗江はずいと一歩踏み出してくる。それなりの乳房はゆさっと揺れ、鼻の頭に甘ったるい花の香が届く。

「別にかまいませんけど、そんな大したことしませんよ」
「でも面白そうじゃない? 崖から突き落とされた弥彦、彼を岩場に運んだのは誰か? そして背後で渦巻く遺産相続の闇……」

 岩場で跳ねる波しぶきをバックに紗江は握りこぶしを固めて熱弁する。その様子は二時間の推理ドラマを連想させるも、どこかコミカルであった。

「そこまで大げさなこと……第一、みんな遺産相続には否定的ですよ?」

 紗江のモノローグに必要なのは犯人の影と醜く争う相続権利者の姿。
 犯人の影の候補は突き落とした不審者、大声を上げた誰か、ガレージにいた不審者がいるものの、遺産相続に関しては弥彦の独り相撲。和弥にいたっては「絵の謎」如何に関わらず自分が相続させられてしまうと嘆いている程だ。


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