僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-12
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「で、いったい何がありましたの?」
しばらくして戻って来た理恵と澪。彼女達を迎えたのは公子の作る昼食とトドのように横たわる弥彦の姿。
驚いて当然の事態だが、青ざめた様子の澪はそれどころでも無いらしい。
「……むしろ澪に何があったの?」
今朝方とは様子が異なり、酒気の抜けた理恵ははつらつとして、逆に澪はよろよろと足取りもおぼつかない。
「ん、聞かないで……」
澪は近くにあったコップをとると、水をゴクゴクと飲み下す。
「うん。実のところ私もよくわからないのだ。何故弥彦があんな場所にいたのか、怪我をしていたのか……、まあ本人もこの通り元気だから、じきに事故の経緯を聞かせてもらえるだろうがな」
「ふむ、弥彦よ、お前一体なにしとったんじゃ?」
「それがさ、突き落とされたんだよ。崖の上から……」
「「突き落とされた?」」
一同声が重なり、目を皿のようにして驚く。
「一体何時?」
「で、犯人は?」
「顔は見たのか?」
「どうしてあんな場所にいたんです?」
「崖から落とされて、そのあとは?」
「ま、待て待て、順番に順番に……」
矢継ぎ早に捲し立てられる弥彦はどれに答えてよいのかと慌てふためく。
「じゃあまず、何時のことです?」
順序だてて聞くべきと、真琴は紙にメモを取りながら聞く。
「昨日の夜なんだ」
「どうしてあんなところに?」
「ああ。例の絵のことを調べている途中、ガレージの方で話し声が聞こえて、見に行ったら誰かが逃げるのを見つけたんだ」
「まさか不審者?」
眉間に皺を寄せながらどこかを見る理恵。
「多分な。で、追いかけていくうちに見失って、気付いたら崖だった」
「それで突き落とされたと」
「ええ? そんなことが?」
美羽の出すスパゲティを食べながらも聞き耳を立てていたらしく、文宏が驚いた声を上げる。
「ん? ああ」
意外なところからの突っ込みにキョトンとする弥彦達。彼らの視線にいたたまれなくなり、文宏は「スイマセン」と謝りながら食事に戻る。
「じゃあ、誰に?」
「それが、暗くて分からなかったんだ。それに、コンタクトも外れていたからな……」
「岩場には自分で行ったんですか?」
「いや、体中、特に足が痛くて動けんかったわ」
打ち身箇所十数の彼はところどころ内出血が見え、まだらな痣が出来ていた。
「そして気付いたらあの場所に運ばれていたと……なんとも不可解じゃな」
「あ、いや、もしかしたら勘違いかもしれないが、誰かが叫んでいるのを聞いたな。
それと、人影があったような……」
「それって犯人?」
「さあ……、今となってはどれも分からんよ」
突き落とされたという真実と要領を得ない証言。もともと捜査の素人である彼らは頭を捻るに終始してしまう。