僕とあたしの海辺の事件慕 第一話 「思い出のペンションは元病院」-17
「……恥ずかしがることないじゃん……」
真琴は浴槽から出るとシャツを脱ぎ、ぎゅっと絞る。
「乙女心っていうのは複雑なのよ」
背中を向ける澪は近づく足音に身体を強張らせる。
「最近それが全然わからないんだ。ねえ澪、教えてくれない?」
右肩に手を添えられ、濡れた髪が左肩を刺す。
「ちょっとやそっとじゃ分からないもんなのよ……」
「ずるいよ、澪ばっかりさ……」
肩を滑る手が胸を隠す腕を払い、下から這うようにして揉み始める。
「ん……」
真琴を呼びに行った時点でこうなるかもしれないと予想はついていた。それでも敢えて彼を呼んだのは何も大きな風呂やペンションの外観が怖いだけではなかった。
真琴を感じたい。
覚え始めたばかりの性に悩まされる夜、数日を濡らし、電話越しに他愛の無い話をする幼馴染を理不尽に恨んでいた。
――疼く気持ちとか、ちゃんとケアしてよ……。
「ちゅぅ……ぱっ」
肩甲骨の辺りにキスをされ、前歯で甘く噛まれる。
「澪……」
キスの合間に囁かれるのはズルイ。経験があるだけ真琴のほうが有利。けれど惚れられた強み、充分に戦える。
「まことぉ……」
振り返る自分はどんな顔をしているだろう? 眉も目尻も垂れさせて、半開きの口
からモノほしそうな舌を出す。目は潤んで、鼻の穴がヒクヒクしてたりと、興奮と恥ずかしさ、それに期待の入り混じる情けない卑猥な顔になっているのがわかる。
隠す必要なんて無い。既に捧げあったのだ。
「真琴……」
向き直り、キスに応える。
突き出された舌先はうねうねと蠢き、彼女の口腔内を侵し始める。応じる舌は拙く行為に翻弄されつつ、唾液を交換させていく。
「澪の……おいひい……」
じゅるり、じゅず、ごくん……。
小さな喉仏がごくりと上下すると、今彼の中に自分が入っていくのだと妄想してしまう。
我慢できなくなっていた真琴は体を洗うタオルが払い、遠慮なく秘裂を責め始める。
「ん、だめぇ……もっと、待ってぇ……」
拒むように手を突き出すも位置が悪い。既に追い詰められた格好の澪は背中にタイルのひんやりした肌触りを感じながら、覆い被さる真琴の身体をなし崩し的に受け入れる。
「澪、澪のここ、もう、こんなに……」
中指。一本だけ侵入してきた。
体格のわりに長い指はピアノでも奏でるように彼女の中を泳ぎ、奥の敏感な部分を擽った。